簡単には勝てない。野球は怖いと、あらためて感じた。西武からすれば「勘弁してくれ」というのが、正直な気持ちだろう。3試合連続サヨナラ負けで、この日も悪い流れを断ち切れなかった。

西武の下馬評は私も含め高かった。屈指の先発陣にリリーフも充実しており、開幕前にAクラスを予想した。実際、4カード目途中まで首位だったが、9日から7連敗で最下位に転落。原因は明らかで、打てないことにある。もっとも、長いシーズンで打てない時期は必ずある。いつも言っているように、ヒットを打つ、打たないはしょうがない。だからこそ、苦しい局面や重い雰囲気を打ち破る“きっかけ”が欲しい。そう思って、試合を見ていた。

きっかけは、ベテラン2人がもたらした。4回2死走者なしでの中村剛の同点ソロは、お見事。周りに流されず、自分の仕事を黙々と果たした。さらに、5回2死一、三塁で金子侑が勝ち越し3ラン。スプリットが2球続けて外れ、次は120%、真っすぐの場面。それまでの2打席、その真っすぐに空振り三振していたが、腹をくくったのだろう。

3点リードをもらい、高橋も波に乗った。尻上がりに球の勢い、変化球のキレが増した。7回のピンチを1点で切り抜け、8回は水上、そして9回は抑えのアブレイユへ。手を尽くし、勝つ形に持っていった。その末のサヨナラ負けだ。

前日も2死からサヨナラ負け。詰めの甘さと言えば、そうなるが、そこまでの過程にも反省点はある。7回の失点は、三塁佐藤龍のタイムリーエラー。アブレイユは先頭への四球がいただけない。ただ、ミスはその2つぐらい。それが負けに直結した。失策や四球といったミスは起きるものだが、勝てていないチーム状況では、1つのミスが大きく響く。ソフトバンクも5回は海野の悪送球でピンチを広げ、スチュワートがコントロールミスで金子侑に1発を許した。勝ったから、それらのミスは小さくなった。

お互い同じぐらいミスを出しながら、勝敗が分かれた。首位チームと最下位チームの差と言えるが、当然、ミスが少ない方が勝つ確率は上がる。西武はベテランが存在感を見せ、エースが踏ん張った。それでも勝てないのが、野球の怖さ。少しでもミスを減らすよう突き詰めながら、この日のように「勝つ形」へ持ち込む。その繰り返ししかない。状況を抜け出すために、今の苦しみを次につなげて欲しい。(日刊スポーツ評論家)

ソフトバンク対西武 3連戦をサヨナラでソフトバンクに敗れた西武ナインはガックリ、手前は小久保監督(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対西武 3連戦をサヨナラでソフトバンクに敗れた西武ナインはガックリ、手前は小久保監督(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対西武 9回裏ソフトバンク2死一、二塁、柳田に右中間逆転サヨナラ3点本塁打を浴びたアブレイユ(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対西武 9回裏ソフトバンク2死一、二塁、柳田に右中間逆転サヨナラ3点本塁打を浴びたアブレイユ(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対西武 9回裏ソフトバンク2死一、二塁、柳田は右中間に逆転サヨナラ3点本塁打を放つ(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対西武 9回裏ソフトバンク2死一、二塁、柳田は右中間に逆転サヨナラ3点本塁打を放つ(撮影・梅根麻紀)