3月に入った。WBC開催は、目前である。本番に向けて、最終調整の時期。強化試合などで、状態を上げていく各国の選手たち。その真剣な表情を見れば、大会にかける思いも自然と伝わってくる。2月中旬、ヤクルトとの練習試合で沖縄・浦添を訪れた。昨年11月まで2年間担当していたチーム。懐かしい顔ぶれとあいさつを交わしていると、室内練習場から汗だくの男がやってきた。

 WBCオランダ代表のバレンティンである。「久しぶりね。ユー、イーグルスね。知っている。仙台、楽しい?」と相変わらず、流ちょうだ。年々、日本語のスキルが上達している。感心していると、面白い話を耳にした。バレンティンが、オランダ代表・ミューレン監督に4番以外では試合に出場しないと、直訴したというのだ。もちろん他の選手とのバランスを考えた時に絶対はないのかもしれない。ただ、それ以上に彼の大会へのやる気を感じた。担当の近藤通訳によれば「守備も全力で練習していますしね。慣れていない右翼の守備も前向きにやっています」という。

 バレンティン本人は「ミーは、8番か9番でよろしくお願いいたします」と冗談を飛ばすが、内に秘める闘志は、すさまじいものがあると感じた。日本とはグループが違うが、互いに勝ち進めば、2次ラウンドで顔を合わせる可能性がある。世界のすごい顔ぶれとの真剣勝負。目が離せない戦いになりそうだ。【栗田尚樹】