楽天対オリックス 9回表オリックス1死二、三塁、大城は逆転の中前2点適時二塁打を放つ(撮影・滝沢徹郎)
楽天対オリックス 9回表オリックス1死二、三塁、大城は逆転の中前2点適時二塁打を放つ(撮影・滝沢徹郎)

<楽天7-11オリックス>◇22日◇楽天生命パーク

意外だった。「指笛、吹けないんだよね…」。2本の指をくわえて「フゥー」と息を吐くも、音は鳴らず…。オリックス大城滉二内野手(27)は照れ笑いだった。

沖縄出身。勝手ながら「イーヤーサーサー」とノリノリに躍るイメージがあった。ただ、考えてみれば「指笛」を練習することのない人生だった。10年に興南で史上6校目の「甲子園春夏連覇」を達成。立大でも入学直後から遊撃のレギュラー。スタンドから応援したことなんてない。常にグラウンドで躍動した。

打撃も守備も、センス抜群。研ぎ澄ませた嗅覚で、エリート街道を突き進む野球人生だ。

そんな大城も今季は不振にあえいだ。開幕から21打席無安打…。6月は10試合で打率3分6厘。思うような結果が出なかった。立ち止まって考えると「下半身が使えてなかった。だから打球に力が伝わっていなかったのかな」と反省。そこから、自分の感覚を信じて、打撃練習に取り組んだ。「少し重心を下げて打つように修正した」と話すように、打席で膝を折った。すると、復調に成功。徹底した自己分析の結果、7月は22日までの19試合で打率3割4厘と、本来の姿に。「(状態は)少しずつ良くなっているので、維持できるように頑張ります」。どん底を味わった男が、はい上がってきた。

開幕戦は6番に座ったが、主に1番を務めることが多くなった。「相手ピッチャーのここまでの試合、プレーボールの入り方を見て、狙い球を絞っていくようにしてます。ヒットじゃなくても塁に出られれば、得点圏でクリーンアップに回る。そういう意識で」。西村監督が好む「ヨーイドン」でのヒットも目立った。22日には今季初の3番起用で9回に逆転打。首脳陣の期待に応えたが「僕は変わらない」と役割を強く意識する。「(打順が)後ろの(吉田)正尚や外国人選手にどうにかつなげたらと。チャンスで1人が打ったらつながっていく試合。そういう雰囲気でできている」。大城が笛を吹けば、ナインも躍る。得点力アップは、背番号9の復調が理由のひとつだ。

大城の魅力は「広い守備範囲」にもある。セカンドの守備位置は「僕が(考えて)動いています」と一任されている。「相手バッターの打球方向の傾向とか、カウントなどを考えながら。あとは(味方の)ピッチャーのその日の球威などを観察して動いてますね」。センターに抜けそうな打球、ライトに抜けそうな当たりでも、そこには大城がいる。攻守で欠かせない存在が、覚醒のときを迎える。【オリックス担当 真柴健】

楽天対オリックス ヒーローインタビューを終え観客席に向かって手を振るオリックス大城(撮影・滝沢徹郎)
楽天対オリックス ヒーローインタビューを終え観客席に向かって手を振るオリックス大城(撮影・滝沢徹郎)