元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。10回目は「プロ野球開幕1カ月半の通信簿~助っ人編~」です。

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 3月25日にプロ野球が開幕してから早くも1カ月半が過ぎた。チームの浮沈を握る要素の1つが外国人選手の存在だ。機能しているチーム、そうでないチーム、7月末までまだまだ補強は可能だが今回は助っ人陣に注目してみたい。下位にいるチームも、まだまだ挽回は可能な時期、現段階で補強が必要なのか否か。あくまで個人的に助っ人を5段階評価してみた(5月11日現在)。

※花丸=文句なし、◎=すばらしい、○=良い、△=もう少し、×=早急な改善を


◇セ・リーグ

【1位 巨人の助っ人=投手力×、攻撃力△】

 投手力はマシソンが17試合に登板し3勝0敗、1S、8ホールドで防御率3・54と成績的には何とか数字を残しているものの、首脳陣もまだ満足できないだろう。2軍調整中のポレダは1勝3敗、防御率4・00で散々な状況。けがで2軍調整中だが、マイコラスの早期復帰が待たれる。復帰に時間がどれほどかかるのか、厳しいようなら思い切って先発補強も視野に入れねばならないだろう。

 攻撃力は、けがで現在戦列を離れているクルーズだが、開幕からみればまずまずの成績。守りでも二遊間をこなせるマルチプレーヤーの存在は大きい。早期復帰が待たれる。いっぽう気になるのがギャレットだ。打率2割2分もさることながら主軸で得点圏打率1割4分3厘は、正直厳しい。


【2位 中日の助っ人=投手力○、攻撃力は花丸】

 投手力は出場選手登録を抹消されているが、ジョーダンが2勝0敗、防御率1・73と合格点。ネイラーの1勝2敗、防御率4・62は気になるが、バルデスも1勝しているし助っ人投手陣に安定感が出てくれば期待大。

 攻撃力は言わずもがな、ビシエドが相変わらず好調。打率3割2分1厘、本塁打は1位エルドレッド、山田の12本に1本差となる11本。10日に発表されたが開幕月のセMVPは立派。ビシエドだけじゃない。規定打席がちょっぴり打席が足りないが、打率3割5分5厘のナニータも見事なバットさばきで大活躍。打率上位に顔を出す日も近い。

 気になるのは、1軍の外国人4枠のうち、ビシエド、ナニータ、エルナンデスの野手3人で枠を使っている点。好投しているジョーダンを登板後にいったん抹消しなくてはならない点など投手の稼働率アップという面では、もったいない。


【3位 広島の助っ人=投手力◎、攻撃力は花丸】

 投手力はジョンソンが素晴らしい。先発ローテをしっかり守り8試合先発し4勝3敗、勝敗は打線のかみ合わせもあるのが防御率2・35はゲームを作っている証拠。ジョンソンに負けじとリリーフでジャクソンという投手も面白い。リリーフで17試合登板し0勝2敗、8ホールドはチームに貢献できていると思う。

 攻撃力は誰が見てもエルドレッド。山田と並び12号で現在本塁打キング、出塁率と長打率を足したOPSが驚異の1・106と高数値をマークしている。前回コラムでも少し触れたがルナの加入でエルドレッドが奮起したと思う。ルナが復帰してくれば、お互いライバル争いを演じてチームへの相乗効果に期待。打線にも厚みが増すだろう。


【4位 阪神の助っ人=投手力◎、攻撃力○】

 投手力は、11日の巨人戦で2敗目を喫したメッセンジャーだが、ここまで4勝2敗、防御率3・40。先発ローテをしっかり守り頑張っていると思う。救援のマテオも0勝1敗9S、防御率1・56はいい数字だ。

 攻撃力はゴメスがまずまずの働きだ。打率こそ2割5分6厘だが評価したいのは勝負強さ。得点圏打率3割7分1厘は菊池、新井(いずれも広島)に次ぐ高数値。さらにリーグの打点王(34)だ。チャンスでゴメスに回せば勝機は拡大する。それと比べてヘイグはさっぱりだ。阪神ファンの気持ちに立てば、マートン帰ってこいと言いたいだろう。


【5位 ヤクルト=投手力○、攻撃力◎】

 投手力は、ミスター0、防御率0・00のオンドルセクはさすが。昨年王者の「勝利の方程式」の一翼を担った実力者。今季もここまで奮闘している。

 攻撃力は、ついにバレンティンが本領を発揮し状態が上向いている。打率3割1分3厘、10本塁打(トップまで2本差)、29打点はリーグ2位。絶好調の山田との「燕砲」は強力すぎる。バレンティンは今季が契約最終年だったと思うが、活躍しなければ来季の高額年俸(推定3・6億円)はないだけに発奮材料には十分だ。


【6位 DeNA=投手力△、攻撃力×】

 本音言えば、投手力は×と迷ったがモスコーソが先発ローテで頑張っているので△にした。とはいえ先発で2勝3敗、防御率4・13。もう少し頑張ってほしい。

 攻撃力はパッとしない。ロペスが打率2割2分1厘、6本塁打では寂しい。ロマックはどうしているのだろう。


◇パ・リーグ

【1位 ソフトバンク=投手力は花丸、攻撃力は判定不能】

 投手力は、バンデン(万全)だ。デビューから無傷の14連勝で日本プロ野球新記録を打ち立てたバンデンハークの5勝0敗、防御率1・98を筆頭に防御率0・95、11Sのサファテ。スアレスもまずまず(防御率0・79)とスキなし。

 攻撃力はカニザレスが打率1割9分2厘でチームに貢献していないが、そもそも助っ人が強力すぎる打線に必要ないのだから。だから判定不能にした。


【2位 ロッテ=投手力○、攻撃力○】

 投手力はスタンリッジ1人が頑張っている。2勝3敗だが、勝ち負けは仕方がない。ただ、防御率2・08はゲームを作っている証拠。先発ローテを守っていることは評価できる。

 攻撃力はデスパイネが打率2割7分3厘、7本塁打、22打点で及第点。ナバーロは11日のソフトバンク戦でようやく来日1号を放ったが打率2割4厘。少しメッキがはげてきたかも?


【3位 日本ハム=投手力△、攻撃力○】

 投手力は、メンドーサがここまで2勝3敗、防御率3・86、リーグトップタイの暴投3個。中継ぎのマーティンは1勝1S、1ホールドで防御率2・35とまずまずだが、バース(2勝4敗、防御率5・52)も含めパッとしない。

 攻撃力はレアードが1発の怖さで存在感を発揮し打率2割5分7厘、10本塁打(リーグ2位)、20打点、長打率5割2分1厘(リーグ2位)とまずまず。攻撃とは少し外れるがレアードは守りも器用で失策も1つ、グラブさばきも評価できる。


【4位 楽天=投手力×、攻撃力○】

 投手力は過去に実績もあるミコライオの活躍に期待するしかない。

 攻撃力は、ゴームズは退団して帰国したがウィーラーが頑張っている。打率2割7分5厘、5本塁打だが、目を見張るのは勝負強さ。打点28はメヒアに次ぐリーグ2位。得点圏打率も3割7分2厘と高数字だ。


【5位 西武=投手力×、攻撃力◎】

 投手力はC・C・リーも2軍落ち。補強するか日本人で踏ん張るか…。

 攻撃力は2冠王のメヒアさまさま。打率3割5厘、14本塁打(リーグ1位)36打点(リーグ1位)。2014年に本塁打王にもなったメヒアだけに本塁打、打点は驚かないが、打率3割超は素晴らしい。ちなみに昨年は2割3分5厘だったが、今季は逆方向にも打てるようになったのが大きいと思う。


【6位 オリックス=投手力△、攻撃力×】

 投手力はディクソン1人が奮闘し、ここまで3勝3敗、防御率3・75、ゲームは作っているもののリーグトップの27四死球は何とかしてほしいものだ。

 攻撃力は、モレルが打率2割3分9厘、3本塁打、15打点では物足りない。10日に昇格し、期待されたブランコも右膝痛を再発させてしまった…。


 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)