まれに見る接近戦が続いてきた今季のセ・リーグに比べ、残念なのがパ・リーグです。圧倒的に強いソフトバンク、なんとか踏ん張る日本ハム以外はあまり元気がなく、開幕から最下位予想の多かった楽天は大久保監督の引責問題が起こりました。

 そんな楽天に先駆けて、というか、6月という早い時期に監督休養劇が発生したのがご存じのとおり、オリックスです。

 開幕前は阪神同様、優勝の本命とされながら低迷しました。ここに来てようやく5位を楽天と争うありさまで、期待外れもいいところ。その責任を取る形で森脇監督の休養、事実上の辞任をしたわけです。

 少し脱線しますが、チームが負ければ監督が辞めるというスタイルが、正しいのかどうか、今もって私には分かりません。監督を代えても戦力がなければ勝てないのは誰でも分かる。その監督の選手起用、戦い方、考え方、ひいては「人間力」といったことをフロントが吟味して評価することが何より大事でしょう。別にプロ野球に限らず、組織全般にあてはまることだとは思いますが。エラそうにいって申し訳ありません。

 同時に、指揮官である監督の方から低迷の責任を取ってやめるのは潔いことだとも思います。森脇氏も悩んでの結果だったと思います。

 しかし、先日、私には驚く発表がオリックスからありました。森脇氏が9月1日付で球団シニアアドバイザー(SA)に就任するというものです。

 誤解のないように言っておきますが、監督として結果が出なかったからといって、野球人としてのすべてが否定されるわけでは当然、ありません。野球への知識、球界人脈などを考慮して、例えばこのオフ以降にフロント入りしてもらうという選択肢は何もおかしくはありません。

 でも。現在、オリックスは森脇氏の休養を受け、福良ヘッドコーチが監督代行として指揮を執っています。監督代行というのは難しく、特に今回のオリックスの場合で言えば、負け戦の中でどれだけファンを納得させられるか、という課題があります。

 そんな苦闘のさなか、同じシーズンの間に休養した監督がフロント入りするという。こんな話は聞いたことがありません。

 球団経営に詳しい関係者は「契約の問題が大きいのでは」と推測し、以下のように説明します。

 「オリックスは森脇氏と2年契約を結んでいたようだけど、思わぬ形で辞めることになった。しかし契約は残っているのでおカネは払わないといけない。球団によっては“裏金”的に支払うかもしれない。しかしオリックスは金銭面はキッチリしているので、仕事をしていない人にお金を払うことはない。だからこういう形になったのでは」

 もちろん、それだけではなく、森脇氏の評価もあってのことなのは間違いありませんが、それにしても、今季のオリックスは9月から、完全に「監督不在」のチームになったのです。

 私が言いたいのは、日本に12人しかいないプロ野球監督の座というのは、そんなに軽いものなのか、ということです。

 「文化財」という言い方をする人もいますが、何より、老若男女が安心して楽しめるスポーツ娯楽として、大きな人気を誇り、子どもは選手に、大人は監督に自分を投影して楽しむのがプロ野球でしょう。

 20年前の90年代半ば、遊軍として担当記者としてオリックスの取材を続けました。素晴らしいチームでした。言うまでもなく、あのイチローが中心にいたのですが、おとこ気あふれる仰木彬監督もいたし、選手はみんな輝いていた。

 阪神大震災の95年には「がんばろう神戸」の復興のシンボルとなり、95、96年のリーグ連覇、96年には長嶋巨人を倒して日本一にもなった。チーム自体も、はっきり言って「暗黒時代」と言われたおとなりの阪神より人気がありましだ。

 だからこそ激しくなる取材をめぐってけんかもしたけど、フロントの方々もみんな気持ちよかった。今でもいい日々を送らせてもらったと感謝しています。

 それだけに、最近のオリックスのゴタゴタぶりは寂しくて仕方がありません。いささか申し訳ない気持ちもありながら、再び魅力あふれるチームに、よみがえってくれることに期待し、書いてみた次第です。