今更言うまでもないが、こういう試合運びができるから阪神は強いと思う。今季13勝目で3、4月の勝ち越しが決定。開幕時の危機を切り抜け、昨季の強さを感じさせる状況になってきた。そういう印象を強く受けたゲームかもしれない。

1つのポイントは4-3と1点差に迫られていた7回の攻撃だろう。この回から登板したヤクルトの左腕中継ぎ・山本大貴の前に代打・原口文仁が倒れる。続く1番・近本光司は中前打で1死一塁。2番・中野拓夢を打席に迎えて「ここはバントするかな、でも1死だからな」と思った。

指揮官・岡田彰布の作戦はズバリ、犠打。中野は2ボール1ストライクからの4球目を投手前に転がし、2死二塁の場面をつくった。ここで好調の3番・森下翔太が左前に快打を飛ばし、5点目をマーク。9回、抑えのゲラがまさかの? 1発を浴びたものの5-4の1点差勝利となった。結果的に7回のあの1点が効く形になったのである。

岡田 1、2番、左が並んでいるので。(右投手に代わっても)まあ右対右なんで。なんとかセカンドに送っとけば、どっちか2人でかえしてくれるかな、という気はありましたけどね。

左右の対戦にとことんこだわるわけではないが、森下、大山悠輔がより打ちやすい状況をつくったということだろう。2死になっても得点圏に走者を送ったことがはまり、逃げ切れた。

1回に先制されたが、しっかり逆転しての勝利。これで逆転勝ちは8勝となり、12球団トップだ。さらに特徴的なことがある。これで1点差ゲームの勝敗は6勝2敗となった。これも12球団トップの数字だ。この傾向は昨年も顕著だった。阪神は25勝(14敗)でセ・リーグでトップ。ちなみに12球団のトップは3連覇を果たしたオリックスで26勝だ。要するに“そういうこと”なのかもしれない。

勝たせる采配。投手を中心にした守りの野球。これは岡田が就任前から話していたスタイルだ。それが2年目でしっかり定着している。もちろん1年目から「日本一」という最高の結果を出しているのだが球団初のリーグ連覇へ向けても大事なことだろう。

老練な指揮官を頂点に、自分たちの戦い方で阪神は落ち着いてきた。もちろん、セ・リーグは今後も混戦は続く模様だ。佐藤輝明の不振などマイナス要素もあるが、そう簡単に落ちていく雰囲気はない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト ヤクルトに勝利し小幡(右)らナインを迎える岡田監督(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト ヤクルトに勝利し小幡(右)らナインを迎える岡田監督(撮影・加藤哉)