高崎健康福祉大高崎(群馬)は、チーム一鈍足の“ぽっちゃりスラッガー”、4番柴引良介内野手(3年)が、好走塁で決勝のホームイン。天理(奈良)を破り、3年ぶりの8強。

 50メートルは7秒6。チーム一の「鈍足」でも、高崎健康福祉大高崎の柴引は走る隙を見逃さなかった。1-1の7回1死二、三塁。佐藤が打った一ゴロを天理の一塁手が捕球した。目でけん制された三塁走者の柴引は本塁突入を諦め、戻りかけた。しかし、一塁手が背を向けた瞬間、再び猛ダッシュ。一塁ベースカバーに入った二塁手へ送球する間に、本塁へヘッドスライディングを決めた。

 1回戦(宇部鴻城)で本塁打を放った177センチ、88キロの「ぽっちゃりスラッガー」が、好走塁で決勝点を奪った。「1点がほしかった。今まで、足で(稼いだ)得点はありません」と笑った。試合前のキャッチボールで勝機を見いだした。「一塁手の投げ方や送球に不安があった。ショートバウンドの可能性もあると思った」。盗塁はほぼ縁がない。打球判断の練習でも「打者」を務めるが、走塁の意識は染みついていた。

 チームの盗塁はゼロでも、青柳博文監督(42)は「機動破壊」の成功を説いた。「(柴引に)ゴロゴー(のサイン)は出していないが、よく観察していました。数字に表れない機動破壊ができた」。生まれ育った沖縄に「帰りたい」と嘆いていた柴引が、打って走って甲子園を楽しんでいる。【和田美保】