「強拳」で勝つ! 学法福島の主将で主軸を打つ高橋拳外野手(3年)は、右手の握力が85キロもあるパワーヒッター。格闘技転向を勧められるほどの怪力をバットに込め、チームを勝利に導く。

 学法福島の逸材、高橋が最後の夏に燃えている。新チーム結成以降の県大会は昨秋2回戦、春は1回戦敗退と振るわず、今回はノーシード。「やることをやってきた。夏は近いけど、気持ちはいつもと変わらない」。主将、主軸として初の甲子園出場へ力を尽くす。

 高橋の魅力はその並外れたパワーだ。「北斗の拳」が由来という「拳」の名の通り、握力は右が85、左が70と数値は関取並み。記者が、持参したリンゴを渡すと笑いながら右手で軽く握りつぶしてくれた。チームのトレーナーに「プロレスラーになるつもりは無いのか」と問われたほど、179センチ、84キロの体全体に鋼の筋肉もまとう。

 その力をバットに込めれば「フルスイングしなくてもスタンドに入ります」。春の県北地区大会敗者復活決勝では2打席連続アーチをかけるなど、高校通算本塁打は23本。宍戸亨監督(62)も「ボールを飛ばすのが上手。普通に打っても飛ぶので、力を抜いて打てと言っています」と、長打力に太鼓判を押す。

 両親の影響とサポートも大きい。父勝義さん(48)は91年全日本ロードレース(TT-F3クラス)で優勝経験もある元2輪レーサー。握るものはハンドルとバットと違えど、力を受け継ぐ長男に期待をかけ、約6年前には庭に屋根付きのバッティングケージを作り上げた。母久美子さん(48)も最近、近所のスポーツ店で行われた握力計測会で40キロをマークして優勝。5000円の賞金をゲットした。トス上げなど、息子の打撃練習に、とことん付き合ってきた。

 そんな家族への恩返しとなる集大成の夏。高橋は力みすぎて空回りする弱点を克服するため、木製バットを使い、芯に当てることを意識して練習を続けてきた。「自分は反射的に打つ選手。タイミングさえ合えば…」。はまれば、この夏高橋の豪快なアーチが何本も見られるはずだ。【高場泉穂】

 ◆高橋拳(たかはし・けん)1998年(平10)3月14日、福島市生まれ。大森小3年から野球を始め、同4年から「福島リトル」に所属。信夫中1年時には全国大会出場。2年から「南東北ヤングベースボールクラブ」に所属。学法福島では1年秋からレギュラー。空手初段。179センチ、84キロ。右投げ右打ち。血液型A。

 ◆学校法人松韻学園福島高校 1942年(昭17)福島電気工業学校として開校。93年から現校名。生徒数は623人(女子159人)。野球部は49年創部で部員数32人。夏の最高成績は準優勝。所在地は福島市御山町9の1。栗原清一郎校長。