ナイジェリア人の父を持つ関東第一(東東京)のドラフト候補、オコエ瑠偉外野手(3年)が、驚異のスピードで5年ぶりの甲子園に導いた。全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)東東京大会決勝は、関東第一が毎回の19安打に8盗塁を絡め、日大豊山に大勝した。「チーター」の愛称を持つオコエは、4回に通常の中前打で二塁に到達する「センター前ツーベース」をマーク。「1番中堅」として3安打2盗塁3得点と暴れ回った。

 「チーター」オコエが、迷わず一塁ベースを蹴る。4回無死。投手の足元を抜いた打球が、中堅へと抜けた。「深いところに守っていたので、いけると思いました」。打球は中堅手の真っ正面に向かう「普通の」中前打だったが、グングンと加速して二塁に滑り込んだ。野性味あふれる「センター前ツーベース」で一気にチャンスをつくった。

 50メートル5秒96の俊足で、二塁到達タイムは7秒53をマーク。プロの世界でも8秒を切れば俊足と言われる中で、驚異的な数字をたたき出した。4人体制で視察した巨人の山下スカウト部長は「あんなプレーは初めて見た。視察は4回目だが、見るたびに評価が上がる。右中間、左中間じゃなくて、普通のセンター前だから。(巨人)長野より速い」と驚いた。西武、ソフトバンクなど5球団が視察し、「(西武)秋山、(ソフトバンク)柳田クラス」と球界を代表するスピードスターの名前が相次いだ。

 周囲が騒然とした走塁だが、本人は「練習試合でもどんどんやってます」と涼しい顔。打席に入る前は2・0以上ある視力で外野の守備位置を確認しスキがあれば次の塁を狙う。こんな姿勢が「チーター」と呼ばれる理由だ。

 14年センバツは、直前でメンバーを外れ、アルプススタンドで応援した。悔しさを胸に「ホームランばかり狙っていた」という考えから、スピードを生かすスタイルに変更。決勝戦の朝は興奮で寝付きが悪く、午前5時から1人で約1時間バットを振り込んだ。静寂の中で感覚を研ぎ澄まし、3安打2盗塁で、夢見た甲子園切符をつかんだ。

 前日はスーパー1年生清宮擁する早実(西東京)が甲子園出場を決めた。清宮には春季東京大会の初本塁打に続いて、練習試合でも場外弾を浴びた。「清宮、清宮と言われているので、俺らが目立っていこうって、チーム全体で言ってます。甲子園では球場を沸かせたい」と燃える。驚異的なスピードに、遠投120メートルの強肩。「チーター」オコエが、真夏の甲子園を熱くする。【前田祐輔】

 ◆オコエ瑠偉(るい)1997年(平9)7月21日、東京・東村山市生まれ。小1から捕手として野球を始める。小6からジャイアンツジュニアに入り、外野手に転向。東村山六中では「東村山シニア」に所属。関東第一では2年春からベンチ入り。高校通算36本塁打。家族は両親、妹。183センチ、86キロ。右投げ右打ち。

 ◆関東第一 1925年(大14)に創立した私立校。生徒数は1963人(うち女子819人)。野球部は27年に創部。部員数は94人。甲子園出場は春5度、夏6度の通算11度目。主なOBは日本ハム武田勝、広島中村祐太ら。所在地は江戸川区松島2の10の11。松橋勝政校長。

◆Vへの足跡◆

3回戦13-1海城

4回戦9-0大森

5回戦8-0東京成徳大高

準々決勝12-0明大中野

準決勝8-3帝京

決勝14-2日大豊山