秋田商が「集大成」を見せる。全国高校野球選手権(甲子園)は明日6日に開幕する。2年ぶり18度目出場の同校に4日、援軍が訪れた。秋田県高校野球強化プロジェクトのアドバイザーを務める大藤敏行氏(53)が選手を激励。09年夏に中京大中京(愛知)を全国制覇に導いた同氏らで構成される強化プロジェクトは、今大会を最後に役目を終える。11年に「全国4強以上」を目標に立ち上げて5年目。その期待を秋田商が担う。

 金言だ。兵庫・伊丹市内での2時間の練習後、アドバイザーの大藤氏が力説した。「練習でできたことしか試合ではできない」。龍谷(佐賀)との10日の初戦に向け、秋田商の選手は真剣に耳を傾けた。

 県強化プロジェクトが最終年を迎えた。11年の立ち上げから同年夏の能代商(現能代松陽)、12年夏の秋田商の3回戦進出が最高成績。だが大藤氏は「選手、監督の意識が変わった。全国でも力の差はなかった、と分かったのでは」と効果を話す。実際、今春のセンバツでは大曲工が昨秋の四国王者・英明(香川)を破り、県南地区の高校が初めて甲子園で1勝を挙げた。アドバイザーは2カ月に1回、県大会8強以上のチームを巡回。年2回は会議を開いて強化策を話し合ってきた。

 大阪桐蔭、浦和学院(埼玉)などが地方大会で敗れたため、大藤氏は「各チームに差がない」と分析し、秋田商について「上位にいけるチャンスがある」と話す。中でもエース左腕の成田翔(かける=3年)を「大会屈指の左腕。球も速いし、コントロールがいい。勝てるピッチャー」。秋田大会5試合39イニング55奪三振などの内容を高く評価した。

 成田翔は春に大藤氏から「いい投手だから自信を持ってやれ」とアドバイスされ「その自信を持ってやってきた」と振り返る。県強化プロジェクトの目標は「全国4強以上」とハードルは高いが「1つ1つ勝つことで上にいける。負けない限り試合はできる」とエースは本気だ。秋田の威信をかけた戦いが5日後、始まる。【久野朗】

 ◆秋田県高校野球強化プロジェクト 10年まで夏の甲子園ワーストに並ぶ初戦13連敗した秋田県が、「全国4強以上」を目標として11年に立ち上げた。アドバイザーは選手に技術的な指導も行う。大藤氏のほか、アドバイザーにはNHK高校野球解説者で元日本新薬監督の前田正治氏や、投球動作解析などに実績がある国際武道大・神事(じんじ)努助教らがいる。