仙台育英(宮城)の4番郡司裕也捕手(3年)が、読みの鋭さでチームを3年ぶりの16強に導いた。2-0の5回1死から変化球を狙い打ち、左越えにソロアーチ。守備では初回無死一塁から、滝川二(兵庫)の俊足・根来祥汰外野手(3年)の盗塁を予測して刺し、流れを渡さなかった。チームは2試合連続2ケタとなる12安打で7点を奪い、エース佐藤世那(3年)が1失点完投。明日16日の3回戦は花巻東(岩手)との東北対決となった。

 打っても守っても、読みがさえ渡った。2-0の5回。「縦の変化球を狙っていた」という郡司のバットが、初球の内角の甘いカーブを捉えた。ライナー性の打球が左翼席に飛び込む。この回の4点を生む、呼び水になった。

 滝川二のエース右腕友井寛人(2年)の直球がカットボールのように「微妙に曲がるので、自分には合わない」と変化球に狙いを定めた。直球の制球が悪く、変化球でストライクを取りに来ることを察知。「3点目が欲しかった」と、ひと振りで仕留めた。

 捕手でも予測能力を発揮した。初回無死一塁から滝川二のヒットエンドランを「来ると思った」。佐藤世にフォークを投げさせて、打者の空振りを誘ったうえで盗塁阻止を狙った。フォークの捕球のため、ミットの位置は地面すれすれ。それでも、捕球から二塁までの送球時間「1秒9ちょっと」というプロレベルに近い強肩で、50メートル5秒9と俊足の一塁走者・根来を刺した。

 佐々木順一朗監督(55)は「あれをアウトにしたのは大きい。あそこで盗塁が決まっていたらゾッとする」と話した。1回表に2死一、三塁の好機を逃していた。直後の裏の守備。流れを相手に渡さないビッグプレーとも言えた。

 今春のセンバツは神村学園(鹿児島)との1回戦で12点を奪いながら、敦賀気比(福井)との2回戦は1点しか取れずに敗れた。「(ヒットが)出るだろうという気持ちがどこかにあった」と郡司。今夏も明豊(大分)との1回戦は20安打12点。大勝後の一戦は12安打と再び強力打線を見せつけ、春の教訓を生かした。

 3回戦の相手は花巻東に決まった。夏の甲子園での東北勢対決は09年以来。6年前は同じ宮城の東北が花巻東に敗れている。郡司は「同じ東北勢で切磋琢磨(せっさたくま)してきた。細かい野球をやってきます。まだ油断はダメ」と気を引き締めた。エース佐藤世をリードし、4番打者として打撃陣もけん引する郡司の夏は、まだまだ終わらない。

 ◆郡司裕也(ぐんじ・ゆうや)1997年(平9)12月27日、千葉県市原市生まれ。小学2年から野球を始め捕手。ちはら台南中では千葉市リトルシニアに所属し、3年時に主将で全国大会優勝。仙台育英では1年秋からベンチ入り。2年秋からレギュラー。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。趣味はパズドラ。