聖光学院が日大東北に延長14回サヨナラ勝ち。エース左腕鈴木拓人(2年)が気迫で14回187球で完投した。

 ボールに気持ちがのった。1-1の延長11回表、聖光学院エース鈴木拓は1死満塁のピンチを迎えた。その時点で球数は130球超。疲れは「ピークだった」が、続く代打鈴木を空振り三振。次打者細野への5球目では自己最速を3キロ更新する140キロをマーク。続く6球目の136キロの直球で再び空振り三振を奪うと、雄たけびをあげた。

 斎藤智也監督(52)いわく、延長14回を戦うのは「未知の領域」。チームにとっても、鈴木拓にとっても初めての経験だった。しかも日大東北は、ここ2年秋の県大会で敗れ、3年連続夏の決勝を戦った因縁の相手。14回裏1死二塁、瀬川航騎内野手(1年)のサヨナラ適時打でゲームが終わると、鈴木拓は号泣した。「何回もピンチがあって、何回も負けを覚悟した」。苦しさから解き放たれ、涙が止まらなかった。

 今春の東北大会準々決勝花巻東戦では、1-1の3回から登板し6回に6失点し、悔し涙を流した。以来、ピンチになるとその場面を思い出し「ここで折れちゃダメだ」と自分を鼓舞してきた。屈辱を乗り越える1勝にも「まだまだ」と満足はない。「今日は過去のこと。精いっぱいのボールを投げていきたい」。14回187球を投げ、12安打1失点10奪三振。熱いピッチングで、たくましいエースに生まれ変わった。【高場泉穂】