八戸工大一のプロ注目の右腕・種市篤暉(3年)が初戦の八戸戦で先発登板。5回を投げ7安打2失点を喫したが、鋭い投球で8三振を奪い、大物ぶりを発揮した。試合は12-2(6回コールド)で勝った。種市は冬に背中を痛め、春季東北大会までマウンドから遠ざかったが、夏は万全で復活。いよいよ甲子園への道のりに足を踏み出した。

 スタートは苦しかった。1回表に味方が2点先制したが、種市はその裏1死一、三塁のピンチに左中間二塁打を打たれ、同点にされた。だが逆転は許さなかった。2回には3者三振に切って取るなど、気迫の投球。5回無死二、三塁のピンチも切り抜けた。結局7安打1四球8三振。初回の2失点だけにとどめた。

 「初戦の緊張で立ち上がりはあがってしまった。ストレートが高めに浮いたところを打たれた。2回からスライダー主体に切り替え、抑えることができた」。種市は淡々と振り返った。長谷川菊雄監督(39)は「以前は四球で走者をためて打たれていた。よくあそこで抑えた。成長した」とエースに目を細めた。

 この日のストレートの最速は2回に出した145キロ。自己ベストの148キロ更新はならなかったが、2回以降主体にした変化球の鋭さが目を引いた。縦横のスライダーやカーブ、チェンジアップの切れは抜群だ。3番打者としても二塁打を放ち、犠飛で打点1を挙げるなど責任を果たした。

 春の地区大会、県大会は一塁手で出場し、東北大会からマウンドに復帰。3日の能代商(秋田)戦では今年初めて9回を完投した。半年以上、尾を引いたケガがようやく完治した。「夏に間に合ってよかった。今回はチャンス。甲子園という舞台に行きたい」と力を込めた。

 長谷川監督は「あとは試合慣れ。1試合1試合しっかりつくっていけば」と期待する。この日は右ヒジ痛だった岡堀治登(3年)も復帰。最終回となった6回を3者三振に切って取り、試合を終えた。最速145キロの2年生右腕古屋敷匠真や米塚吏生(りき=3年)もいて、種市だけに負担をかけない投手陣の層の厚さが強みだ。

 学校創立60周年の今年、種市という逸材を擁して八戸工大一が甲子園に突き進む。「次からは平常心で投げます」。種市の言葉が静かな闘志を表した。【北村宏平】