早実を撃破し勢いに乗る八王子学園八王子が初の甲子園に「あと1勝」と迫った。第98回全国高校野球選手権(8月7日開幕、甲子園)西東京大会は準決勝が行われ、同校が創価に8-6で打ち勝ち、9年ぶり3度目の決勝進出を決めた。4番の保條友義外野手(3年)が4打数4安打。自ら「チーム1は赤点の数」といってのける主砲が、満点のバットで打線を引っぱった。27日、東海大菅生と対決する。

 6-6の同点とされた直後だった。八王子学園八王子が引き離しにかかる。7回無死二塁、保條の流し打った打球が左前で弾んだ。あこがれのソフトバンク柳田をまね、左肘を上げるフォームでフルスイングした結果だった。「まっすぐを待っていたんですが、体が(スライダーに)反応しました」。自身初の4安打固め打ち。この1点が決勝点となり、決勝に進出した。

 早実戦(23日)の9回、清宮の一打同点の夢を乗せた打球(犠飛)をもぎとった選手だ。「入ったと思ったら(打球が)戻ってきたんです。持ってるなと思いました」。もっとも打席は3打数無安打。創価戦を前にして安藤徳明監督(54)に呼ばれ、個人ミーティングが開かれた。「甘く来れば打てるが、外ばかり攻められる。踏み込んで逆方向にフルスイングしよう、初心に戻れと」。同監督が説明した。

 1回、外角の131キロをフルスイングすると打球は左翼手の頭上を越え、先制点をもたらした。これでチームも乗った。保條は今春、数学と古典の追試があって満足に練習できず、背番号10に。昨秋も追試で東海大菅生との練習試合に出られなかった。自ら「チーム1は赤点の数です」と言ってのける。最後の夏に追試はなく4番を任され、ついに爆発した。

 主砲に引っ張られ、14安打8得点。早実を倒したチームは3度目の決勝に進出した。9年前の決勝で敗れたのは創価だった。安藤監督が「三度目の正直という意識はない。力は東海大菅生が上。伊藤君をどこまで打てるか楽しみです」といえば、保條は「制球がいいしスライダーもいいんで」と気を引き締めた。

 新チーム結成後初の公式戦となった昨秋の都大会はブロック予選で敗れ、本大会に出られなかった。初の屈辱から10カ月後、夢の甲子園にあと1歩と迫った。【米谷輝昭】

 ◆甲子園未出場の市町村 全国で人口40万人以上の市町村(東京23区を除く。計45市)のうち、春夏甲子園出場校がまだ出ていないのは八王子市(東京)と横須賀市(神奈川)だけ。昨年夏、専大松戸が人口48万人の松戸市(千葉)から初めて出場している。