父との約束を聖地で果たす。第89回選抜高校野球大会(3月19日開幕、甲子園)の選考委員会が27日、大阪市内で開かれ、昨秋の都大会を制した早実の4年ぶり21度目の出場が決まった。通算78本塁打の早実・清宮幸太郎内野手(2年)は中学1年時に、父克幸さん(49=ラグビー・ヤマハ発動機監督)からプロ入りの基準に設定された80本まで残り2本。節目のアーチを甲子園の空にかけ、春夏通算50回目の出場を優勝で飾る。組み合わせ抽選会は3月10日に行われる。

 言葉を発する度に、カメラのシャッター音が会見場に響いた。無数のフラッシュを浴びる異様な雰囲気の中でも、清宮は、早実にとって春夏通算50回目の出場となるセンバツ大会への思いを堂々と語った。

 清宮 伝統、誇りがあります。その伝統に泥をぬらないように、また新たなページを自分たちが作っていければいいと思います。

 甲子園での目標を聞かれ、「もちろん、優勝です」と即答した。1年夏の甲子園では5試合で打率4割7分4厘、2本塁打。準決勝で仙台育英に敗れ「絶対に戻ってくる」と誓って以来の聖地に「どこの球場にもない雰囲気で、自分の力以上のものを出させてくれる。球が遅く見えたり、自分にいいように働いてくれるので、また甲子園でいい結果を出したい」と胸を躍らせた。

 中学1年の時、父克幸さんから高校で「80本」という具体的な数字を示された。それぐらい本塁打を打てば、プロに行ってもいいと言われた。父は忘れていたほどの軽い会話だが、清宮自身にとっては大きな目標となっていた。高校入学時から「80本くらいは打ちたい」と宣言。理由を公に明かすことはなかったが、必死にそこを目指した。現在、78本塁打で残り2本。あの時からずっと意識し続けた、父との約束を聖地で果たす可能性が出てきた。

 雪辱も胸に、甲子園に乗り込む。昨年11月の明治神宮大会決勝では、履正社(大阪)に敗戦。「全国クラスのチーム」と認めるが、「負けてから、パワーアップを図った。臆することなく、自分たちの力を発揮すれば勝てる」と断言した。昨秋の都大会決勝で5打席連続三振を喫した日大三も出場を決め「次はもっと自分が打って勝ちたいです」と力を込めた。

 昨秋の日大三との都大会決勝のように、球場全体の雰囲気も変えられるのがチームの強み。「早実スタイルで全試合戦い抜く」と誓った清宮は「部員だけじゃなく、応援してくださる方々全員で球場の雰囲気を変え、相手をのみ込んで自分たちのペースで野球をするのが持ち味。甲子園でもそういう野球をしたい」と意気込んだ。新たな歴史を刻む、「清宮の春」がいよいよ到来する。【久保賢吾】