<高校野球・春季東北大会:花巻東6-2仙台育英>◇14日◇天童市スポーツセンター◇準決勝

 花巻東(岩手)は、公式戦初先発の左腕菊池雄星投手(2年)が完投し、6-2で仙台育英(宮城)を下した。

 時折「オリャっ」という声が、球場に響いた。最速149キロ、2年生ながら東北NO・1投手の呼び声高い花巻東の菊池が、要所で気合を込めた。「制球がもうひとつだったので、何とかバットを振ってくれないかと思って。声を出して、腕を振ってカバーした」。ガムシャラに投げていた1年時とは違う。この日最速は140キロも、変化球を効果的に交え、相手打線を翻弄(ほんろう)した。

 昨夏県決勝で145キロを記録し甲子園も経験した左腕だが、意外にも公式戦は初先発。腰に不安があったため、これまではリリーフ登板だけだった。佐々木洋監督(32)は夏を見据え先発を決断。「150キロ出しても勝つとは限らない。連投が利くよう、力まずに少ない球数で抑えることがテーマ。それを守りながらやってくれた」と125球での初完投をたたえた。

 視察した3球団のスカウトも、うなった。中日山本スカウトは「去年より左足にタメができたね。ケガなく順調なら、間違いなく上位」と、はや来年のドラフト候補生に挙げた。菊池は入学時から身長が2センチ伸び183センチ、体重は69キロから一気に82キロまで増えたという。「人の倍は食べましたから」と笑う大型左腕は、日ごとに大きく成長する。【清水智彦】