<高校野球・春季東北大会:青森山田8-7酒田南>◇16日◇最終日◇YZ・タカスタ◇決勝

 青森山田(青森)が延長10回8-7で酒田南(山形)を下し、3年ぶり3度目の優勝を果たした。6回までに0-7とリードされたが、9回表2死に同点。10回表2死一、三塁から4番斎藤樹伸(たつのぶ)一塁手(3年)が決勝打を放った。3番手で登板した中村篤人投手(2年)が5回 2/3 を1安打に抑える好投で、7点差をひっくり返す同大会決勝史上、最大の逆転劇を呼び込んだ

 青森山田がすさまじい逆転劇で、3度目の頂点に立った。最後の打者を三振に取った中村篤は、クルリと回り左拳を突き上げた。5回1死満塁から登板、最初の打者に適時打こそ浴びたが、以降は無安打投球。流れを引き戻し、逆転を呼んだ。立役者は「0点に抑えれば、追い付いてくれると信じて投げた」と語った。

 昨秋からベンチ入りし、公式戦はこの日が4試合目の登板。前日の花巻東戦で先発し、5回 2/3 を投げ1失点に抑えた。「不調なりに抑えられたのが自信になった」と、この日の好投につなげた。渋谷良弥監督(61)は「今日は投入するつもりはなかったんだけど…災い転じて、って言うのかな。大収穫です」と喜んだ。

 その“災い”の7点を、攻撃陣が驚異的な粘りではね返した。決勝でなければコールドになろうかという状況から、7回一気に4点。9回は2死一、三塁から7番矢野君侍(きみひと)捕手(3年)の2点二塁打で同点に追い付いた。最後は「あきらめずにやろう」と声をかけ続けた斎藤が、4安打目を放ち勝負を決めた。

 冬休み前、学校から八甲田山のふもとを、全員で往復する20キロのランニングがある。雪で視界も足場も悪い中を走り続ける、通称「モヤラン」。ハイライトとも言える冬場恒例の練習で、粘りは培われた。

 大逆転での優勝に「自信につながる」と斎藤。春の東北を制したが、勝負は夏。県記録をさらに更新する5連覇がかかる。渋谷監督は「課題は投手。明日から猛練習ですね」。常勝軍団形成へ、気を緩めることはない。【清水智彦】