<高校野球・春季東北大会:盛岡大付6-3仙台育英>◇9日◇決勝◇福島市・県営あづま球場

 「打倒・花巻東」で、みちのくを制した。盛岡大付(岩手)が6-3で仙台育英(宮城)を下し、創部30年目で初の東北王者に輝いた。打線が夏に向けて取り組んだ「雄星対策」を生かし、好左腕・木村謙吾(2年)を攻略。投げてもエース伊東昂大(こうた=3年)が8回途中まで2失点と好投した。甲子園切符をかけた夏の舞台へ勢いをつける、春の快進撃となった。

 まだ1点差だ!

 得点を重ねてリードを広げても、盛岡大付ナインは声をかけ合って攻める姿勢を貫いた。4回、3本のヒットと相手の守りのミスで2点を先制すると、さらに2死一、二塁から代打・小宮稔真(2年)が右中間へ2点三塁打を放ち、この回一挙4得点。昨夏甲子園を経験した木村に集中攻撃を浴びせ、一気に流れを引き寄せた。

 左腕対策は完ぺきだった。今春センバツで、同じ岩手の花巻東が152キロ左腕、菊池雄星(3年)を擁して準優勝に上り詰めた。関口清治監督(32)は「菊池君を倒さないと甲子園には行けない」と、4月から練習試合の相手校に左腕投手の起用を要請し、徹底的に「仮想雄星」の訓練を続けた。紅白戦でも140キロ左腕・伊東が主力組を相手に登板。その伊東もこの日、準決勝まで3戦連続2ケタ安打の仙台育英を7回までは散発2安打に抑える好投で、勝利に貢献した。

 中学時代に菊池と対戦した熊谷童夢主将(3年)ら、地元出身選手の多くが花巻東ナインと縁がある。旋風を巻き起こした“旧友”に誰もが勇気をもらった。また、就任1年目の関口監督は大会前日の4日、花巻東・佐々木洋監督(33)と一関学院・沼田尚志監督(49)に誘われ、福島市内のギョーザ店で会食。両校が初戦敗退しただけに「なんとか勝ち進んで、岩手の強さを証明したかった」と振り返った。

 さあ、次は夏という本番だ。「あくまで甲子園が目標。これに満足せず、挑戦者として挑みたい」。伊東の力強いまなざしは、天敵との決戦の日に向けられていた。【由本裕貴】