<センバツ高校野球:智弁学園5-2早鞆>◇26日◇1回戦

 智弁学園(奈良)が35年ぶりの春1勝を挙げた。元ダイエー外野手の大越基監督(40)率いる早鞆(山口)に先制されながら、エース青山大紀(3年)の逆転打などで5点を奪取。センバツの連敗を6で止めた。

 大黒柱の責任をバットで果たした。1点を追う5回2死満塁。この絶好機で打たなければ、青山は青山ではなかった。

 「ボールは狙わず、アウトコースの球を左中間に打つことを意識した」。イメージ通りの打球が三遊間を破り、逆転の2点打になった。「みんなが回してくれたチャンスですから」。5点奪取の攻撃を、エースはそう振り返った。

 1死から口火を切ったのは、満身創痍(そうい)の山口だ。選抜大会直前の練習試合で一塁に頭から滑り込んだ際に左肩を脱臼し、左手薬指は脱臼と3針縫う裂傷を負った。薬指には厚くテーピングをまき、左手は親指、人さし指、中指の3本でしかバットを握れない。痛みをこらえ、左前にチーム初安打。犠打、暴投で2死三塁になり、中道主将が右肩に死球。一塁に歩きかけ、痛みに顔をゆがめ両膝に手をついた。

 「なんとか点を取ろうという気持ちにみんながなった」。エースは逆転打でナインの思いを体現した。4番小野が3ランで続き、大越監督率いる早鞆を沈めた。

 脚力も兼ね備える青山は、小坂将商監督(34)が1番起用を検討するほど打撃も非凡。昨夏から甲子園通算4戦で15打数5安打6打点。「不調のときは左打ちのスイングをしながら腰は逆に回す。バットが内から出るように矯正できる」と、不振脱出法も身につけている。投げる方は「肝心なところで力んでしまって」と2失点で、全開とはいかなかった。それでも35年ぶりに春1勝。昨夏の8強超えに、エースのバットでスタートを切った。【堀まどか】

 ◆青山大紀(あおやま・だいき)1994年(平6)11月28日、大阪・藤井寺市生まれ。巽東小3年から若江ジャイアンツで野球を始める。藤井寺中では葛城JFKボーイズに所属し3年時に全国制覇。50メートル6秒0。183センチ、73キロ。右投げ左打ち。