<高校野球春季東北大会:仙台育英9-1酒田南>◇8日◇準々決勝◇天童市スポーツセンター球場

 仙台育英(宮城)は、酒田南(山形)に7回コールド勝ち。仙台育英先発の馬場皐輔投手(3年)が、自己最速を5キロ更新する146キロをマークし、4安打1失点で完投した。

 叫ぶ声が大きくなる度、馬場の球威が増していく。4回2死、7番清水への4球目だった。高めに外れるボールとなったが、146キロをマーク。今春センバツで出した自己最速の141キロを大幅に更新した。「低めに投げた時より、バーンといった感じがした」。体重はセンバツ時から5キロ増の81キロと一回り大きくなった。パワーと気迫が、指先からボールに乗った。

 甲子園では好投したが、春の県大会は打ち込まれる場面が目立った。先発した決勝の利府戦は、満塁弾を浴びるなど8安打8失点の大乱調。1回1/3でKOされた。声を上げながら腕を振るスタイルは健在だったが「県大会では受け身だった」と、どこか弱気だった。

 「このままだとズルズルいってしまう」と危機感を抱く馬場に、佐々木順一朗監督(53)は言った。「(球の)キレが悪いのは、体じゃなくて頭のキレが良くないからじゃないかと、3回まで皮肉を込めて言い続けた。ほえて投げるようになって、覚醒した」。つまり、体力や技術ではなく気の持ちよう。馬場は吹っ切れた。常時140キロ台前半の直球を軸に、4安打8三振1失点で完投した。

 昨夏の甲子園出場時はメンバー外のB班におり、打撃投手だった。帽子のつばには、ペンでこう記してある。「元B班3番手

 気持ちで投げる」。1年足らずで中心選手となったが、泥くさく闘志全開で腕を振るのが、馬場の最大の魅力だ。【今井恵太】