<高校野球秋季関東大会:山梨学院大付4-3高崎健康福祉大高崎>◇29日◇準々決勝◇ひたちなか市民

 “吉田マジック”が再び甲子園に戻ってくる。山梨学院大付(山梨1位)が4-3で高崎健康福祉大高崎(群馬1位)を破り、4強入り。来春のセンバツ出場をほぼ確実にした。09年のセンバツで清峰(長崎)を優勝に導いた吉田洸二監督(44)が今春就任。選手をノビノビとプレーさせる采配で、1年目から結果を残した。また佐野日大(栃木1位)は横浜(神奈川1位)を破り、白鴎大足利(栃木2位)と桐生第一(群馬2位)もベスト4に入り、甲子園出場が確実となった。

 山梨学院大付・吉田監督は、試合後、ベンチ前でグラウンドに深く一礼した。「清峰で体験できたことがここでも出来た。2死からあると思っていましたので。でもまさかですね」と無邪気に笑った。

 8回2死一塁。打球を一塁手がファンブル(記録は内野安打)し、2死一、二塁となった。打席は1安打ながら4回、6回の好機で凡退していた8番稲葉皇介内野手(2年)。「エンドラン仕掛けるか」と聞くと、「大丈夫です。打ちます」(稲葉)。初球を振り抜いた打球は中越えとなり、同点の適時打となった。

 マジックの“予兆”はあった。1-3の7回無死一、二塁。立て続けに走者がけん制で刺された。ここで監督の教えが生きる。「併殺、けん制死、バント失敗。この3つの後は大きな局面。そして大きな大会は2死から流れがくる」。言葉通り、諦めない姿勢が8回2死からのミラクルを生んだ。

 山梨学院大OBの同監督は4月に着任。09年に長崎の清峰をセンバツ優勝に導くなど、春夏5回甲子園に出場。約10キロの丸太を抱えての300メートル走などユニークなトレーニングで鍛え上げてきた。就任わずか半年で関東ベスト4に押し上げた手腕は、もはやマジックという言葉だけでは片付けられない。【栗田尚樹】

 ◆清峰時代の吉田監督

 ユニークなトレーニング方法でチームを強化した。県立だったため部の年間予算が15万円という環境で、用具を工夫。切り出した丸太を持たせインターバル走を行い下半身を強化。また同じように丸太を背面に投げるなど、背筋力を強化し長打力を磨いた。01年に同校に赴任すると、チームは05年に夏の甲子園初出場。06年はセンバツにも初出場し、準優勝。09年のセンバツでは今村猛投手(現広島)らを擁し、初優勝を遂げた。