<高校野球春季秋田大会:明桜11-4仁賀保>◇8日◇中央地区2回戦◇協和球場

 元プロ野球選手の八木茂監督(60)率いる明桜が、今春の公式戦初戦で仁賀保を8回コールドで破った。八木監督は規制緩和された新制度のもと、今年1月に学生野球指導の認定を受け、3月に監督に就任。東北地区でただ1人のプロ野球出身監督として名門再建を目指す。

 明桜・八木監督の試合後の第一声は「ほっとしてます」だった。就任1カ月半で迎えた初の公式戦。5回まで4-4の接戦に持ち込まれたが、6回に勝ち越すと畳み掛けるように7、8回に追加点を重ねてコールドを決めた。内野の2失策に走塁ミスもあり、内容は「60点」と採点したが「勝てたことが一番」と穏やかな笑顔だった。

 阪急と阪神で内野手として5年間プレーした後、中学生年代のシニアリーグや母校の早大などで指導を続けてきたが「高校野球の監督をするのがずっと夢でした」。今年1月に高校で指導できる資格を取得。昨年12月に急逝した三浦第三監督(享年73)の後任を探していた明桜から早大関係者を通じて声がかかり、3月に単身で秋田へやって来た。

 3月14日から指導を始めたが、最初は驚きの連続だった。内野の捕球、捕手のスローイングなど基本的な動きがままならず、選手たちに覇気も感じられなかった。「本当にこいつら野球好きなのかな?

 と思いました」。ノックを増やして基礎を細かく指導しながら、何よりも野球に対する執念を厳しく諭してきた。

 変化は選手自身が感じている。遊撃手の佐々木泰人主将(3年)は「勝ちたいという意識が強くなった」という。「甲子園に行こうと思うなら今考えることを取っ払ってついてこい」。練習初日に言われた言葉を信じ、09年夏から遠ざかる甲子園へ復権を目指す。

 学校で体育の授業を担当し、野球部員とともに寮で生活する八木監督は「最後の奉公です」と笑う。「野球は素晴らしいということを伝えたい」。阪神のユニホームとよく似た縦縞のユニホームに身を包み、明桜に新たな風を吹き込んでいく。【高場泉穂】

 ◆八木茂(やぎ・しげる)1953年(昭28)11月28日、大阪府八尾市生まれ。興国高、早大、東芝を経て79年ドラフト3位で阪急(現オリックス)入団。84年に阪神でプレーした後に引退。目黒西シニアや大正大の監督、早大コーチを務め、今年1月に高校野球指導者に認定された。家族は夫人と1男1女、孫5人。

 ◆明桜

 1953年(昭28)に秋田短大付として開校した私立校。64年に秋田経大付、83年に秋田経法大付と改称し、07年から現校名。野球部は開校時に創部。甲子園出場は春5度、夏8度。主なOBに元巨人の小野仁、ソフトバンク摂津正ら。秋田市下北手桜守沢8の1。近藤和裕校長。

 ◆元プロ選手のアマ指導

 昨年7月に条件が大幅緩和された。元プロ選手らが高校の監督になるには教員免許を取得して2年間教壇に立つこと、大学の場合は退団後2年経過が条件だったが、短期間の研修だけで許可されるようになった。研修は昨年末から行われ、これまで455人が認定されている。都道府県高野連では指導を希望する元プロ選手らを公示していて、東北では青森12、秋田18、岩手14、宮城18、山形15、福島17人が登録されている。