<高校野球大阪大会>◇7月31日◇準決勝

 関大北陽が大商大堺に3-2と逆転勝ちして、10年ぶりの決勝進出を決めた。観戦に訪れたOBの岡田彰布阪神前監督(51)が所用で球場を引き揚げた直後の8回に、代打攻勢で逆転に成功。

 7回の攻防を見届けた岡田前監督が退席すると、関大北陽の反撃が始まった。1点を追う8回に3本の長短打で逆転。お祭り騒ぎの三塁側ベンチでは、感極まった選手数人がもう泣きだしていた。「岡田さんの見ている前でいい試合ができてよかった」と主将の川西良貴内野手(3年)。最高の場面にその姿はなかったが、偉大なOBの熱視線も力に変えた。

 2年前に校名変更。ベンチ入り18人中、16人が3年生。「北陽」として入学した最後の学年だ。「僕たちは伝統ある北陽の最後の生徒。そういう思いを持っている」と川西。大会前に3年生全員で話し合い、アップシャツの左そでに「北陽最後の44人」と刺しゅうを入れていた。

 控えに回った3年生が決勝に導いた。8回1死一塁から、代打の荘野龍司内野手(3年)が右翼線に同点三塁打。荘野は途中降雨ノーゲームとなった4回戦の汎愛戦で先発出場も、1、2回と一塁に悪送球。ショックが打撃不振にもつながり、スタメン落ちした。その時以来の打席で結果を出した。「チームのみんなが『お前が回ってくるまで負けへん』と言ってくれていた。その言葉で頑張れた」と笑顔が戻った。

 直後の決勝打も代打だった。片井真平内野手(3年)が中前へ。3月に左太もも肉離れを起こし、青木巧己内野手(2年生)にスタメンを譲った。「とにかく代打で結果を出したかった」。今大会はすべて代打で6打数4安打の活躍だ。

 9回は右ひじ痛から復活した中村暢之投手(3年)が4試合ぶり登板で1回をピシャリ。いろんな働きができる選手がいるのも、関大北陽の強みだ。PL学園との決勝対決に向け新納(にいのう)弘治監督(47)は「挑戦者の気持ちでやりたい」と強調した。勝てば夏10年ぶりの甲子園。伝統を受け継ぐ“最後の北陽戦士”が、新たな歴史の1歩を踏み出す。【大池和幸】