ア、ナ両リーグで計5810本塁打を記録した今季のメジャーは、09年以来7年ぶりに5000本を超え本塁打量産時代の再来といわれた。その一方で、野球データ分析サイトで知られるFanGraphsが、面白いデータを紹介している。メジャー全体がパワーアップしてきている中で、外野手に限っては「軽量化」していきているのだという。その分、外野全体のパワーは低下しているが、スピード型選手が増えてきた。

 例えば今季のア・リーグMVP選出で2位に入ったレッドソックスのムーキー・ベッツ(24)は身長175センチ、71キロ。今季リーグ最多の三塁打9を記録したホワイトソックスのアダム・イートン(27)は175センチ、82キロ、今季ゴールドグラブ賞を受賞したブレーブスのエンデル・インシアルテ(26)は175センチ、75キロ、3年連続56盗塁以上を記録するレッズのビリー・ハミルトン(26)は185センチ、73キロだ。今季ア・リーグMVPに輝いたマイク・トラウト(25)のような重量級、04年に本塁打王に輝いたマーリンズのジアンカルロ・スタントン(27)のような超重量級もまだいるものの、軽量級外野手は確かに増えており、目立った活躍もしている。

 若手ばかりでなく、178センチ、88キロのラージェイ・デービスは36歳だが、今季は持ち前の走力が復活し、43盗塁をマークしてア・リーグ盗塁王に輝いた。本人に話を聞いたことがあるが、今季移籍したインディアンスは選手の栄養管理体制がしっかりしており、デービスは水分補給を多くするダイエット法で自身のベスト体重を維持してきたという。

 軽量化の傾向は特に第4の外野手に強くみられ、30年前と比較すると控え外野手には足が遅い強打者タイプより守備力に優れスピードのあるタイプが好まれる傾向がはっきり出ているそうだ。内野に強打の選手が増え、その分、外野手には別の役割が求められる傾向が強くなっているのかもしれない。軽量、スピードといえばマーリンズで来季17年目を迎えるイチロー外野手(43)もそうだが、外野手のこのトレンドが続けば、この先も長く現役続行を目指しているイチローにとっては、朗報といえるだろう。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)