<ブルージェイズ1-0マリナーズ>◇23日(日本時間24日)◇ロジャーズセンター

 【トロント(カナダ)=四竈衛、木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(36)が前人未到の10年連続200安打を達成した。あと2本に迫ったブルージェイズ戦で、第2打席から連続安打。今季152試合目でメジャー一番乗りで大台に到達した。シーズン200安打の10年連続は自らが昨年更新したメジャー記録を塗り替え、10度の回数でもピート・ローズ(元レッズ)に並ぶタイ記録になる。記録男にまぶしく輝く金字塔がまた1つ、加わった。

 イチローが今季200個目の「H」ランプをともし、前人未到のステージに立った。過去3打数2安打と分のいい右腕ショーン・ヒルを攻略。5回の第3打席、初球の直球をとらえて、打球は鋭く二遊間を抜けた。ヘルメットを取って祝福の拍手に応えた。

 大記録を目前に控えた緊迫感とは無縁だった。しっかり2打席目でスイングを修正した。カウント1-1からシュート気味に真ん中に入る速球をたたき、糸を引くようなライナーで左翼線を破った。涼しい顔で二塁に到達したイチローとは対照的に、スタンドはざわつき始めた。

 初回の第1打席はフルカウントから、内角高め90マイル(約145キロ)の速球に空振り三振。「大台対決」で全米の注目を集めた顔合わせはその裏、ブ軍バティスタがメジャー3年ぶりとなるシーズン50号を左翼席に運んで先行。だがイチローも負けじとその1時間後、10年連続200安打という2つの大台を重ねて、主役の座を奪い返した。

 マジック3で臨んだ22日(同23日)は、初対戦となった22歳の新人右腕ドレイベックの前に沈黙。だが左腕タレットに代わった8回の第4打席に、2-0と追い込まれながら外角の変化球を見極め、最後はフルカウントからの速球を中前へ低空ライナーではじき返した。

 試合後は自らの打撃ではなく、イチローの持つ猛打賞年間26回の日本記録に並んだロッテ西岡の話題に集中した。「抜いて喜べ、って言っといて。早う抜け、って。どこ見てんだ、オレの。ムネ(ソフトバンク川崎)と変わんねぇぞ、それじゃ」。既存の記録に近づき、並ぶだけでなく、超えてこそ本物。06年の第1回WBCで一緒に戦った後輩の成長を喜ぶ一方で、期待を込めたゲキも忘れなかった。

 その一方で、本塁打王を独走するバティスタに対する敵地ファンの大声援を、快く受け止めていた。チームとしてはプレーオフ進出の可能性が消滅しながら、打席ごとに更新中の球団新記録を盛り上げようとする球場の一体感は、選手冥利(みょうり)に尽きることだった。「ああやって見ている人が楽しんでいるのはいいですよね。本来あるべき姿だと思いますけどね」。過去数年、イチロー自身も同じような立場であり、今季も周囲の期待に応えて大台をクリアした。