ポスティングシステム(入札制度)を利用し、米メジャー入りを目指していた楽天岩隈久志投手(29)の来季の残留が22日、確実となった。独占交渉権を得たアスレチックスと岩隈側との交渉は同日までに不調に終わった。

 ポスティング制度の被害者が、ついに出た。難航が予想されたとはいえ、ア軍と岩隈側の交渉は座礁した。第1回折衝で双方に条件面の開きがあることは、交渉事の常識。歩み寄りの余地すらないまま、交渉打ち切りを決定したア軍の姿勢は、いかにビジネスライクな米国でも理解しがたい。

 そもそもア軍が岩隈を落札したことが、米球界では「サプライズ」だった。ア軍といえば、選手の発掘、育成に定評がある一方で、年俸が高騰しそうな選手をいち早く放出し、常に低年俸の若手を重用してきた。観客数減で資金難が続き、これまでは高額のFA市場にも無縁だった。実際、日本には専属スカウトを配置しておらず、他球団関係者からは「同地区ライバルへのけん制」「(業務提携する)楽天への義理」など、岩隈獲得への真剣度を疑う声も聞こえた。さらに、米メディアには、獲得直後にトレードするとのうわさも流れるなど、交渉前から波乱含みだった。

 現時点で、ア軍の本意は明らかになっていない。ただ、落札しても決裂すれば懐が痛まない、との事実が通例化すれば、入札制度が根幹から崩れていくことは避けられない。

 長年の夢がしぼみかけた岩隈にすれば、今後、気持ちを切り替えるのは簡単ではないだろう。ただ、リスペクト(敬意)を欠くようなア軍ではなく、本当に必要とされるチームを、自ら選べる日まで待つのが得策かもしれない。【メジャー担当・四竈衛】