<ワールドシリーズ:カージナルス1-2レンジャーズ>◇第2戦◇20日(日本時間21日)◇ブッシュスタジアム

 レンジャーズが、土壇場の逆転劇でカージナルスに競り勝ち、対戦成績を1勝1敗のタイに戻した。1点を追う9回表無死一塁から、奇策の盗塁で好機を広げ、主軸の連続犠飛で逆転に成功。劣勢をはね返した。第3戦は22日(同23日)、レ軍の本拠地テキサス州アーリントンで行われる。

 流れを変える特攻策だった。0-1の9回表、先頭のキンスラーが出塁した後、ワシントン監督が選択したのは、単独盗塁だった。セオリー通りであれば、まずは同点狙いで送りバント。実際、2番アンドラスはバントの構えで相手バッテリーを揺さぶった。だが、1ボール1ストライクから一塁走者キンスラーはスタート。アンドラスはバットを引き、間一髪で二盗に成功した。

 表面的には、ギャンブルだった。試合後、ワシントン監督は、ニンマリしながら「バントで二塁に進めて中軸に回したかった」と説明した。その一方で、実はしたたかな計算も働いていた。試合前のミーティングでは、カ軍の抑えモットからは「盗塁可能」のデータを伝えていた。セットポジションから捕手のミットに届くまで、モットのクイックモーションは平均1・3秒。1・2秒以内なら速いとされるメジャーで、強肩モリーナとのコンビでも俊足キンスラーなら成功の可能性大と読んだ末の積極策だった。ヘッドスライディングしたキンスラーも「自分が伸ばした手が一瞬だけ速かった。できる限りのことはやったよ」と、してやったりだった。

 その後、アンドラスの中前打と敵失で無死二、三塁とチャンスが広がり、ハミルトン、ヤングの連続犠飛で逆転に成功。初戦と同じ継投で先取点を許したミスを、土壇場でかき消した。アンドラスは言った。「うちはミスを恐れない。それが強みだよ」。奇策、ギャンブルのようでも、データに裏打ちされた戦術。シリーズの流れを変える可能性のある盗塁で、レ軍は対戦成績をタイに持ち込んだ。【四竈衛】