【ダラス(米テキサス州)7日(日本時間8日)=広重竜太郎、四竈衛、佐藤直子通信員】西武中島裕之内野手(29)が名門ヤンキースで定位置獲得を狙う。大リーグ機構はポスティングシステム(入札制度)に申請した中島の独占交渉権をヤンキースが獲得したと発表した。落札額は250万ドル(約1億8750万円)で30日間の独占交渉期間を得た。ヤ軍の首脳は「控え」と明言したが、「ジーターの後継者」としての期待含みの落札。中島は得意の右方向への打撃で、主将の遊撃ジーターと通算本塁打629本の三塁A・ロッド、2人のスターに挑む。

 日本報道陣向けの会見を行ったヤンキースのキャッシュマンGMは、まずはジョーク交じりに中島落札の理由を説明した。「僕はみんなを驚かせることが好きなんだ」。遊撃ジーターをはじめ、三塁A・ロッド、二塁カノ、一塁テシェイラと、メジャー屈指の内野陣を誇る。それだけに「内野にはレギュラー選手がおり、彼らをサポートする役割を期待している」と、控え選手と位置付けていることを明言した。

 現時点で内野に空席はない。だが、敏腕GMの視点は、来季だけでなく、近い将来の世代交代に向けられていた。「チームをより強くするうえで、国内、海外とも調べてきた。彼は遊撃、二塁、三塁も守れる。WBCの(日本の)遊撃だしね」。近年衰えが見え始めたジーターは来季、遊撃でのフル出場が難しく、故障がちなA・ロッドも、来季DHでの起用が大幅に増える見込み。その一方で、盟主ヤ軍の顔ともいえる2人の後継者育成に時間を要することもあり、メジャー未経験でも走攻守すべてに完成度の高い中島獲得に踏み切った。

 ジラルディ監督にしても、現在の主力を維持する一方で、内野の控えヌネスの外野併用案を検討中。「遊撃手で(西武の)キャプテン。とても優秀な選手だと思う」。まずはメジャーへの適応期間をかねて、中島をバイプレーヤーとして起用。主力への足場を固めさせる方針だ。あえて遊撃、キャプテンと、ジーターとの共通項を列挙したことこそ、近い将来のリーダーとして期待している表れだった。

 実際、創設110年の歴史を持つヤ軍は51年、引退したディマジオに代わってマントルが入団するなど、常に華麗なる世代交代で伝統をつないできた。ジーターから中島へ。定位置は用意されていなくても、背負う期待は大きい。