マリナーズのイチロー外野手(38)が、12年オフにもFA(フリーエージェント)となり、他球団へ移籍する可能性が出てきた。米地元紙「シアトル・タイムス」の電子版が26日(日本時間27日)、今季限りで契約切れとなるイチローの今後について言及。マ軍側は、今季中に契約延長せず、全日程終了後に交渉する方針を伝えた。昨季で連続200本安打が途切れ、今季も成績が低迷すれば再契約しない可能性も高い。FAとなった場合は、日本も含めて選択肢の幅は広がり、例年以上に動向が注目を集めるのは確実だ。

 今や「マリナーズの顔」となったイチローが12年オフ、FAとなって市場に出る可能性が出てきた。この日までにマ軍ズレンシックGMが、今季で契約切れとなるイチローとの契約延長について「現時点では、公式戦終了後に(交渉の)テーブルに着いて話していくつもりだ」と発言。これまでイチローだけでなく、FA選手との交渉経緯について口を閉ざしてきた同GMが初めて具体的な方向性に踏み込み、開幕前や公式戦途中には、再契約交渉をしない方針を明かした。

 01年のメジャーデビュー以来、10年連続200本安打を放つなど米国でもスーパースターの座に就いていたイチローも、昨季は打率2割7分2厘、通算184安打。200本安打だけでなく、球宴出場、ゴールドグラブ賞など、継続していた数々の記録も途切れたことにより、体力の衰えなどを指摘する声も少なくなかった。

 実際、オフはマ軍ウェッジ監督も再三のようにイチローの配置転換を示唆してきた。というのも、これまでの「1番右翼」に固執することなく、相手投手や他の選手との兼ね合いによって2番、3番への打順変更を検討中。実績や立場を最大限に尊重しながらも、変革の必要性をにおわせてきた。

 メジャー球界では絶対的な主力選手に対して、公式戦中に契約延長の交渉を持ちかけるのが常道と言われる。イチロー自身、契約切れとなった07年には、7月中に5年9000万ドル(約108億、当時1ドル=120円換算)で再契約しただけに、今回のマ軍側の姿勢はかつてない厳しさの表れともいえる。「シーズン中のプレーを見たうえのこと。どんなことも起こり得ると思う」(同GM)。現時点で白紙とはいえ、イチロー退団の可能性を否定することもしなかった。

 裏を返せば、すべては今季のイチローの成績次第。一昨年までと同様に、再び打率3割以上、200本安打、ゴールドグラブ賞など文句なしの結果を残せば、すんなり再契約がまとまる可能性は高い。その一方で、積極的な若返り策を進めるマ軍の中で、高額年俸のイチローが昨季同様の成績であれば、いかに貢献度が高くても、FAとなることは避けられない。スーパースターとなっても、メジャーに安泰はない。38歳となったイチローにとって、メジャー12年目となる2012年は、これまでとひと味違う勝負の1年となる。