巨人が、川崎市のジャイアンツ球場を満員にする一大プロジェクトに乗り出す。9日、同球場で今季行われるイースタン・リーグ公式戦での取り組み「G2プロジェクト」を発表。1軍を目指し鍛錬する若手を気軽に応援できるよう、さまざまな試みを行う。目玉はアクセスと食。最寄り駅から球場までの臨時バスを運行し、寮で選手たちの胃袋を満たす「ジャイアンツカレー」も販売する予定だ。

 ジャイアンツ球場を札止めにする。チャレンジを説明する久保球団社長は「お客さんが少なくてもったいない。(キャパシティーは)座りで3700人、立ち席が300人ほど。4000人を目指します」と意気込んだ。同球場で行われるイースタン・リーグ公式戦の平均入場者数は1185人。倍増から、さらにジャンプアップを目指す。

 なぜ今、2軍なのか。「FA、外国人選手、トレード。強化はいろいろあるけど」と、理念を説明した。

 久保社長 強化の一番の源は、若い選手が2軍の壁を突破して、1軍で活躍すること。ファンの声援や共感を、強化の源にしたい。シーズンの途中でやめることは、ない。時間をかけて取り組みたい。

 内海、山口、西村。野手は坂本に松本哲。緑豊かなジャイアンツ球場で成長し、1軍の軸になるまで駆け上がっていった。今年はドラフト1位で岡本が入った。人の往来が激しい巨人でも、たたき上げは長きにわたってチームの財産となる。苦労を知るファンは自分を重ね、応援する。ビルドアップこそ真の強化につながると考えている。

 現状の課題をクリアにする。高台にある同球場は、最寄りの「京王よみうりランド駅」から徒歩で15分ほどかかる。やや急勾配の坂道を上り切らなくてはいけない。21日(祝)の試合を皮切りとし、週末を中心に14試合、無料の臨時バスを運行する。

 アクセスの次は食だ。寮で供されるカレーを再現した「ジャイアンツカレー」を、球場内で販売する予定。肉と野菜を丁寧に煮込んだ逸品は選手にもファンが多い。中井は「そんなに辛くない。いつも2杯、食べていました」。藤村は「5年、食べ続けたんですよ。舌が覚えている。体に染み込んでいる感じです」。松本哲も「優しい味でおいしかったですよ」と懐かしむ。同じ味を共有すれば応援にも力が入る。

 選手の出迎えに記念撮影会などなど。距離が縮まるアイデアを詰め込んだ。鍛錬の聖地をファンと一緒に育んでいく。【宮下敬至】

 ◆ジャイアンツ球場 1955年(昭30)6月から多摩川グラウンド(現多摩川緑地広場運動施設内硬式野球場A面)を2軍の本拠地として使用してきたが、85年10月4日に、よみうりランド内に完成。09年(平21)には、球場そばに総工費13億円の新室内練習場を併設させた。最寄り駅となる「京王よみうりランド駅」からの遊歩道(階段)は01年3月に「巨人への道」と命名され、長嶋監督(当時)直筆の題字をもとにした石碑がある。また、同駅からの上り坂は「よみうりV通り」と呼ばれており、09年在籍メンバーの手形が埋め込まれている。坂道を歩くつらさを紛らわそうと、地面を見ながらうつむいて歩く姿が見られる。