病床の原監督に朗報を届けた。巨人金城龍彦外野手(38)が、古巣DeNAを相手に決勝の1号3ランを放った。0-0で迎えた7回2死一、二塁、モスコーソのチェンジアップを青色に染まった右翼席に運んだ。オフに16年間在籍したDeNAからFA移籍。この日はインフルエンザB型に感染して不在だったが、長所を見定めた上で金城の1番起用を決めた指揮官の期待に応える1発だった。チームは今季2度目の3連勝で勝率5割に復帰した。

 土を削るように、金城がクルリと回った。らしさが詰まったライナー性の打球が、青く染まった右翼席に突き刺さる。歓声を浴び続けたスタンドから悲鳴が聞こえた。三塁ベースを回って、自軍のベンチを力強く指さした。「みんなが乗り出してくれていたので、それに応えようと。本当にいい仕事ができて最高の気分です」。17年目のベテランもさすがに興奮した。

 涙で別れを告げた古巣から放った移籍後初アーチだった。DeNAへの愛着は強かったが、野球人として勝負する道を選択。獲得を決めた原沢GMからは「重大な局面で、試合を決める存在になってほしい」と期待された。豊富なタレントがそろう巨人で求められた役割は「必殺仕事人」。「ワンチャンスで、と思った。出来過ぎです」と謙遜したが、一太刀で決めた。

 原監督が温め続けた「1番金城」が、監督不在の中、実を結んだ。9日の広島戦から5試合連続で1番で起用されるが、実は開幕前から描いた構想だった。

 原監督 1番バッターはチームに元気、勇気を与えてくれる人がいい。凡退しても下を向かないで、堂々とベンチに戻ってこれる人がいい。ウチなら(坂本)勇人、そして金城だな。『陽』の人間が巨人の1番にふさわしい。

 かつては、清水(現1軍打撃コーチ)を1番に抜てきし、打線を機能させた。過去の成功例と金城を重ね合わせたものだった。

 今季開幕戦で、金城はチーム事情でメンバーから外れた。それでも、何一つ変わらず「準備するだけ」と備えた。指揮官の神通力は、金城の全力で真っすぐな姿勢と合わさった。「原監督も絶対に見てくれていると思います。これからも、もっとチームに貢献できるようにやるだけ」。古巣への感傷はそっと心の奥にしまって、17年目のシーズンに勝負をかける。【久保賢吾】