マエケンにお待たせの大量援護だ。得点力不足に陥っていた広島がDeNA戦の1回に21イニングぶりに得点した。新井貴浩内野手(38)の先制適時打にロサリオの適時打と梵英心内野手(34)の3ランで一挙に5得点。打者9人の猛攻で、試合の主導権を握った。2回以降も効果的に得点を奪い、今季DeNA戦初勝利。これまで援護できなかった前田が2勝目を挙げた。

 1回無死一、二塁から飛球となった丸のバントは、捕手嶺井のミットに収まった。ここまで拙攻を繰り返してきた広島ベンチに悪夢がよぎった。しかし続く、4番新井が一振りで流れを変えた。

 「ミスは誰でもある。それをフォローするのがチームプレー。何とかしようと思った」。フルカウントから外角球を右前にはじき返した。スタートを切っていた二塁走者田中を迎え入れ、一気にゲームの流れをたぐり寄せた。

 4番がつくった流れに、不振の選手たちが続いた。前日スタメンを外れたロサリオが遊撃へ内野安打となる適時打。さらに2死一、二塁から梵は、低めスライダーを捉えた。打球は左翼席へ一直線。1号3ランで、5得点のビッグイニングをつくった。

 流れに乗った打線はその後も中押し、ダメ押しと効果的に得点した。14安打、9得点。緒方監督は「1回にいい攻撃ができた。新井が打線に火をつけてくれた」と賛辞を送った。

 チーム21イニングぶりの得点は4番のバットから生まれた。前日まで2試合連続無得点負け。新井は8打数3安打と気を吐いたが、前夜の敗戦後、恩師でもある広島OBの山本浩二氏から「4番が責任を感じないといけない」と激励された。直立不動でその言葉を受け入れた新井は、一夜明けた1戦で4番としてチームを勝利に導いた。

 1号を放った梵も苦しんでいた。毎日、誰よりも早くグラウンドに出て練習に取り組む。ティー打撃では左足を大きく踏み出してスイングするなど不振脱却にもがいている。「自分を助けるのは自分しかいない。何で良くなって、何で悪くなるか分からない」。今なお打率2割を切る選手会長の言葉は、広島ナインの思いを代弁する。

 14安打9得点で開幕から好投を続けるエースに報いた。ナインは口をそろえる。「明日が大事」。9日以来の連勝で、シーズンの流れも手中にしたい。【前原淳】