DeNA筒香嘉智外野手(23)が“3冠王”に躍り出た。チームは延長10回で競り負け横浜スタジアムでの連勝が11で止まったが、筒香は今季6度目の猛打賞1打点と獅子奮迅の活躍。打率を3割3分3厘まで上げ、ぶっちぎりの打点、本塁打と合わせ、リーグトップに立った。接戦を落としたものの、首位は変わらず。4番と主将を背負う男は、勝利だけを追い求める。

 本拠地での連勝は11で止まっても、4番筒香のバットは止まらない。まず1点ビハインドの3回に、一時同点に追いつく左前打。6回には今季初の三塁打でチャンスメーク。そして勝ち越された直後の9回には、先頭での二塁打で、延長戦に持ち込むホームを踏んだ。チーム唯一のマルチ安打で、本塁打、打点とともに打率もリーグトップに立った。だが、試合後の表情は硬く「いくら打っても、チームが負けたら意味がない」と悔しさをにじませた。

 左腕の能見が相手でも動じなかった。「状態は悪くない。いい感じできています」と振り返った通り、厳しいインコース攻めも打ち砕いた。6回の三塁打は内角低めの直球を捉え、一塁線を抜いた。9回の二塁打も同じく内角へのフォーク。振り抜いた痛烈な打球は、一塁手荒木を強襲し、右翼線へ抜けた。いずれも追い込まれてからの一打。ここ3試合13打席で空振りはわずか1回。決して甘くないコースでも、バットに当てて仕留めるスイングに好調さが表れる。

 昨季は自己最多の114試合に出場。シーズンを通して戦う中でコンディション維持の重要性を再認識した。4番を担う今季はさらに疲労度も増す。体の新陳代謝を少しでも促すため、本拠地では冷水と温水に交互につかる交代浴を欠かさない。遠征先では冷たいシャワーを浴びて代用する。「いかに体調の波を抑えて試合に臨むかが大切なので」と、初の全試合出場に向けて取り組んでいる。

 だからこそ、本拠地での連勝が止まっても、「まだまだシーズンは続く。みんなで一生懸命勝ちを目指して結果を出すこと」と前だけを見据えた。個人成績にも関心はない。「チームの優勝に向かって、勝てるか勝てないかが大事。(個人記録は)関係ない」。タイトルのためでなく、チームのための4番。筒香のバットは、そのためだけにある。【佐竹実】

 ▼筒香が打率を3割3分3厘に上げ、本塁打、打点と合わせて打撃3冠部門のトップに立った。過去に3冠王は7人(11度)いるが、20代で獲得したのは38年秋の中島(巨人)と82年落合(ロッテ)の2人だけ。ともに29歳のシーズンで、今年24歳の筒香が獲得すれば最年少になる。また、筒香は昨年までタイトル0。前年までタイトル0の選手がいきなり3冠王は84年ブーマー(阪急)と85年バース(阪神)しかおらず、日本人選手では過去にいない。