イケメン切り込み隊長が、記念の豪快弾で沈めた。日本ハム西川遥輝内野手(23)が、ソフトバンクとの首位攻防3連戦の勝ち越しへ導いた。2回。1点を先制し、なおも1死満塁で右翼席へプロ5年目で初のグランドスラムをかけた。前日22日のサヨナラ打に続き、2戦連続でヒーローの座を射止めた。女性人気NO・1と評判の絶好調のホープに乗せられ今季2度目の4連勝。4年ぶりにパ・リーグ首位で交流戦突入が確定した。

 胸キュンの道産子ギャルから、絶叫の祝福のシャワーを浴びた。「ウーマンズフェスタ2015」と銘打った3連戦。ふさわしいヒーロー西川が、詰めかけた女性ファンのハートを撃ち抜いた。前夜は9回にサヨナラ二塁打。アマチュア時代も「打っていないと思うんですけれど」。一夜明け、初体験のグランドスラムでソフトバンクを粉砕した。クールな微笑で、2日連続のお立ち台。静かな口調の大人のトークで、最後まで悩殺した。

 男は度胸、を体現した。2回。色気ムンムンの「流し目」で、三塁側ベンチを確認した。1点を先制し、なおも1死満塁。カウントは3ボールだった。ソフトバンク・スタンリッジはこの回、2四球。制球を乱し、待球のサインの可能性もあった。「いい投手なのでファーストストライクを、と思っていた」。以心伝心で、双方の意思は赤い糸でつながっていた。栗山監督は「1球待たせてしまうと、タイミングがずれてしまうこともある。一発勝負」と読み、託した。指示は、好球必打だった。

 覚悟を決め、高ぶった。「3-0から『打て』を出してくれた、監督に感謝している」。外角高めの直球をフルスイングで振り抜き、右翼席へたたき込んだ。プロ5年目で初の満塁弾。偶然ではなく、天性の才能が凝縮されていた。入団当初、2軍首脳陣を驚かせた特長は、高卒新人離れした抜群の選球眼だった。将来的に1番打者の適性があると見込んで育成。昨季途中から狙い通りの座をつかんだ。本能のまま打者有利のカウントへ、したたかに持ち込んだ。この日も、指揮官が「打った(西川)ハルキがすごい」とうなるメモリアル弾を生み出した。

 現代的なルックス。スピード感あふれるプレースタイル。若手主体の日本ハムでも、女性人気NO・1との声が多い。髪形のカラーリングは「メッシュ」という各種の色が入り乱れた、まだら模様。「人と同じのは嫌いなので」という強い個性で、けん引する。熱狂的信者が多く、一部で「ハルキスト」と呼ぶ。同じ名前の読みの小説家・村上春樹にあやかるキュートな支持者たちを力に、5月は打率3割8分6厘と快走中だ。この日の守備位置近く、左翼ポール際の女子高生シートは限定ユニホームでピンクに染まった。狂喜乱舞させたニュースターに今、女子も、チームも首ったけだ。【高山通史】

 ▼日本ハム西川が2回に自身初の満塁本塁打を放った。チームの現役では中田が2本、大野、田中、陽岱鋼、近藤がそれぞれ1本記録している。球団最多は張本勲の7本。また、西川はこの日4安打で、今季の通算安打数はリーグ5位の52本。特に今月に入り安打を量産しており、5月の安打数34はリーグ1位、打率3割8分6厘は同2位。

 ▼首位日本ハムが2位ソフトバンク、3位西武に2ゲーム差をつけ、交流戦前の首位が確定した。首位で交流戦に入るのは09年、11年に次いで3度目。最終的に09年はリーグ制覇を果たし、11年は2位だった。果たして今年はどうか?