巨人高橋由伸外野手(40)が、リーグ戦再開の「リ・スタート白星」を決定付けた。2点リードの7回無死二、三塁、代打で登場。中日田島のフォークを左中間スタンドに運んだ。今季3号3ランは、代打では今季初本塁打。巨人で40代選手が、代打で本塁打を放ったのは57年の南村以来。また1つ“レジェンド”な記録を打ち立て、チームの連敗を4で止めた。

 “巨人の神様”に、大歓声が送られた。亀井とともに上がったお立ち台。背番号「24」の存在を「いやぁ~、もう神様です」とおだてる弟分を、高橋由は、笑顔で見つめた。「急に言われて、あいつも言うことがなかったんじゃないの?」。お立ち台後は素っ気なく振り返ったが、柔和な表情が心情を物語った。

 一振りで前夜の悪夢を振り払った。7回、先頭のマイコラスが四球で出塁。原監督が「我々が守る気持ちを出し過ぎて、プレッシャーをかけすぎた」との反省から「攻めに転じた」一手は代走鈴木。無死二、三塁と好機を広げ、試合を決定付ける一打を託されたのは、代打の切り札だった。高橋由は、攻撃こそ最大の防御とばかりに、左中間スタンドへのアーチで応えた。

 プロ18年目、40歳を迎えても、飽くなき探求心が体をグラウンドへと向ける。スタメンでも、代打でも「いつも通り。どういう形でも、しっかり準備する」野球道は不変。「いくつになっても、つらいことばっかりだよ。練習もしんどいからね。でも結局、何かって、自分のため。やっぱり打ちたいからやるんだ」。

 お立ち台で本塁打の魅力を聞かれ、言った。「唯一、ゆっくり走れるのがホームラン。一番うれしいです」と笑顔で答えた。この日描いた放物線は野球教本に載るような、美しく、豪快な曲線だった。「いろんなタイミングだったり、スイングの形だったり…。いろんな条件がそろった」と納得の3号3ランだった。

 負ければ、セ・リーグに貯金チームが消滅する危機だったが、兼任コーチに過度な意識はなかった。「勝ったからどう、負けたからどうじゃなく、挑むというのは変わらないです」と冷静に語った。「その打席、その打席。常に一振りでと思っている」。代打での40代アーチも1つの通過点。今年もまた、頂点だけを追い求める。【久保賢吾】

 ▼40歳2カ月の高橋由が代打で3ラン。高橋由の代打本塁打は昨年7月22日阪神戦以来7本目で、40歳になってからは初。巨人で40代選手の代打本塁打は、57年7月25日に40歳3カ月の南村が国鉄戦で金田から記録して以来、58年ぶり2本目だ。これで高橋由の今季代打成績は18打数7安打、打率3割8分9厘。巨人のシーズン代打打率は12年石井の4割5厘が最高だが、40歳の高橋由が石井を上回ることができるか。