日本ハムが“災難”に見舞われた。6月30日、年に1度の函館開催だったオリックス戦が雨天中止となった。栗山英樹監督(54)が前日29日に墓参りをした、故久慈次郎氏の野球人としてのルーツであり、昨季は大谷が完封勝利を飾った縁起のいい地での戦いが消滅。そればかりか、航空機、特急列車ともに振り替えがきかず、チーム本隊は札幌まで約4時間20分のバス移動を強いられた。

 湯気の立つコーヒーを2つ手に持ち、栗山監督は球場正面にある久慈次郎像の前に立った。練習開始前の、約3分間の“語らい”のとき。だがその直後、雨脚は急速に強まり、午前11時10分に中止が決まった。「ウチとしてはやった方がよかったけど…。野球の神様がメッセージを送っている。プラスに考えてやります」。いつものように恨み言はないが、残念そうに空を見上げた。

 函館は昨季、大谷が完封勝利を飾り、チームは5連勝と波に乗っていった場所。リーグ戦再開後2勝6敗と苦しい戦いが続いている今季も、28日西武戦に完封勝ちし、最下位のオリックスをたたいて「大きく転換する試合にしたい」(同監督)ところだったが、年に1度の函館開催は幻となった。中田も「残念ですね。切り替えるしかない」。雨にぬれるファンへ手を振った。

 さらに大変だったのはここからだ。当初予定より早く札幌に戻ることになったが、航空機、特急列車ともに振り替えがきかず、チーム本隊はバス移動を強いられた。通常の移動はスーツを着用するが、各選手がTシャツ、ハーフパンツやジャージーなど、楽な格好で乗り込む工夫。それでも、午後1時に宿舎を出発し、洞爺を過ぎたあたりでトイレ休憩を挟んで、札幌の合宿所に着いたのが午後5時20分。約320キロ、4時間20分の旅路。交通網が発達した現代の日本プロ野球では、珍しい長距離バス移動となった。

 仕切り直しとなり、明日2日同戦(札幌ドーム)は勝ち頭の大谷が先発する。栗山監督は「命がけで行きます」。ドタバタ大移動も、言い訳にはしない。【本間翼】