西武が3ラン、3ラン、満塁弾の豪華3本のアーチで首位ソフトバンクを撃破した。初回に2点を失ったが、3回にメヒアが16号3ランで逆転に成功。4回に栗山が5号3ランで突き放すとフィナーレはホームランの第一人者だった。9回に中村剛也内野手(31)が歴代2位タイの通算14本目の満塁弾となるリーグ単独トップの22号で勝利を決定づけた。チームも日本ハムと同率で2位に浮上した。

 今年は1度しか見えない博多の夜空に、3発の花火が上がった。最後の特大花火は、開放されていたヤフオクドームの天井が閉じる目前だった。9回無死満塁。中村が内寄りのスライダーを振り抜き、左翼テラス席に運んだ。歴代2位タイとなる通算14本目の満塁弾を、15本で歴代1位のソフトバンク王会長が見守る中で披露。あと1本と迫り「巡り合わせもあるし、なかなか簡単じゃない」と慎重な姿勢も「頑張っていきます」と視界に捉えた。

 「最後のおかわりの満塁弾で僕のホームランはかすむ」と冗談めかした栗山の1発も極上だった。4回1死一塁から好調秋山が粘って四球を選択。「あれだけ打てる打者が辛抱強く見極めた」。続く主将が初球を狙う。甘いカーブを中堅右のテラス席に高々と届けた。今年初めて新設されたテラス席を見た時に「富裕層(長距離打者)が恩恵を受けるのでは。僕らには関係ないでしょう」と庶民ぶりを強調していた。だがヤンキース時代のカノのような長打も打てる2番を目指す像が明確に形になった。

 鷹の背中が遠のきかけていた。前日6月30日の移動日。羽田空港の本屋で田辺監督は1冊の本を手に取った。江戸時代の儒学者、佐藤一斎の「言志四録」を簡約した内容だった。「今日はゆっくり本を読ませてくれ」と報道陣との談笑も控え、1人の世界に入った。

 「自己啓発みたいな言葉が載っている。難しくて半分くらいで寝ちゃった」と笑ったが、言葉の力も長い戦いで必要になる。「勝ち越したい」と戦前に口にしていたソフトバンク、日本ハムとの上位9番勝負も4勝4敗で残り1戦。「下手したら3タテ食らう雰囲気だった。1つ勝って、明日は思い切りやれる」と目尻を下げた。【広重竜太郎】

 ▼中村が5月30日阪神戦以来今季2本目、通算14本目の満塁本塁打を放った。満塁本塁打は王(巨人)の15本が最多で、14本は藤井(オリックス)中村紀(DeNA)に並び2位タイ。パ・リーグで14本は藤井に並ぶ最多記録となった。中村は現在31歳10カ月。王は14本目が36歳10カ月、15本目が37歳10カ月で、藤井は39歳2カ月、中村紀は34歳2カ月で14本目をマーク。3人より年少で14本目を打った中村は王の記録を抜けるか。