広島が約1カ月ぶりの連敗で借金3となり、4位に転落した。試合前、故障で黒田の出場選手登録が抹消されるショックの中、DeNAに大敗。ただ下を向いてはいられない。8日午前、広島の育成部大野寮長の宮脇敏氏が病気によって死去したと球団が発表。63歳だった。緒方孝市監督(46)を始め、選手がお世話になった恩人のためにも、24年ぶりの悲願へ一丸となる。

 蒸し暑さと観衆1万3625人の熱気とは裏腹に、広島・三次の夜はむなしくふけていった。まだ小雨が降っていた1回に先発薮田が押し出しで1点を失う波乱のスタート。打線はDeNA砂田を打ち崩せず、プロ初勝利を献上した。6月4日以来、約1カ月ぶりの連敗に、緒方監督も淡々と言葉を紡いだ。

 「ここ2試合は少し元気がない姿に映ってしまっている。切り替えて、球宴までの5試合でもう1回気合を入れてやっていきたい」

 噴き出る汗とともに黒田ショックも吹き飛ばしたかったが、出来なかった。試合前、黒田の出場選手登録が抹消された。右足首と右肩の炎症。球宴まであと1試合予定されていた登板は、野村を筆頭に他の投手陣でカバーする必要があった。プロ2戦目の薮田もローテ定着のチャンスだったが、4回途中4失点KO。「逃げているわけではないんだけど…。下に見てみたい選手もいるし、次回は考えさせてほしい」と指揮官は2軍降格を示唆した。

 打線も8回にエルドレッドの犠飛で1点をかえすのがやっとだった。6安打を放ちながら、ホームが遠い。三次のファンが沸いたのは、地元出身の梵が見せた好守だけだった。「早い回に点を取れていれば雰囲気も変わったんだけどね」。しとしと降った雨に、バットまで湿ってしまったか。指揮官も頭をかいた。

 ただ、下を向いている場合ではない。育成部大野寮長の宮脇敏氏の訃報が試合前に伝えられた。緒方監督の脳裏には新人時代から声を掛けられ、契約の場でも話をした記憶が残る。1月には「監督になって、大変だろうが頑張れ」と激励をもらった。「最高の結果を宮脇さんに報告出来るように精進していく」-。勝たなければならない理由がまた1つ増えた。試合後の大雨は涙雨だろう。4位転落は、浮上のきっかけにするしかない。【池本泰尚】