緊迫の投手戦を制し、両リーグ最速10勝目だ。日本ハム大谷翔平投手(21)が10日、西武11回戦(札幌ドーム)で8回3安打無失点の好投。岸との投げ合いを白星で飾った。前回登板で右手に血マメができた影響を感じさせず、今季6度目の2桁となる10K。奪三振数で楽天則本を抜き、防御率、勝利数、勝率と合わせて投手4冠に再浮上した。対西武はプロ入り無傷の5連勝となった。

 125球の苦労の先に、喜びが待っていた。大谷が珍しく、語気を強めた。「今日の勝ちはうれしいですね。今シーズン一番。ゲーム内容的には負けている中で、踏ん張って、最後までいけた」。8回3安打で、被安打1の西武岸に投げ勝った。両リーグ最速での10勝到達だ。

 ちゃめっ気たっぷりに、お立ち台で暴露した。「途中、3回くらい心が折れそうになった」。最速157キロも細かい制球が定まらなかった。1回はバットを折った秋山に連続試合安打を更新され、四球も絡んで1死一、二塁、6回も2つの四球で2死一、二塁のピンチ。だがどちらも、1学年下の森を打ち取って難を逃れた。一方の岸は無安打投球を続けた。「1点やったら終わりだな」。7回には岡のダイビングキャッチ、8回は自身の好フィールディングもあり、負けじと「0」を積み上げていった。

 昨季は8月末までかかった10勝到達を、球宴前に成し遂げた。「そこは去年と1つ違う」。ローテの柱として持つ、プライドと責任。開幕投手を務めた今季は、覚悟を持って臨んでいる。強い責任感、感情を抑えられなかったことがある。5月22日ソフトバンク戦後のことだ。衝動を止めることができず、携帯電話を手に取った。その数時間前、大谷はマウンド上にいた。3点リードの7回、悪夢のような一挙5失点。再逆転して敗戦こそ免れたが、開幕から6戦6勝で突っ走ってきた大谷にとって、今季初めて味わう屈辱だった。「明日、僕を使ってください」。メールの送信画面。送り先は、栗山監督だった。

 申し訳なさと悔しさ。出場を直訴した。仲間の戦いを、ベンチの外でただ黙って見ていることなどできなかった。指揮官も胸を打たれたが、中0日での強行出場は、心に固く決めた「禁じ手」。気持ちは受け取り、例外は認めなかった。

 強い責任感は、この日も表れていた。西武の強力打線を相手に、制球に苦しんでも内角を突いた。「明日、あさってと(対戦が)ある中で、インサイドを意識させる。カード頭の投手はそうなる」。西武、ソフトバンクとぶつかる球宴前最後の2カード。「この5戦は絶対に取らないと」。力強く、たくましく、先陣を切った。【本間翼】

 ▼大谷が両リーグトップで10勝に到達した。日本ハム投手の両リーグ10勝一番乗りは11年ダルビッシュ以来8人、9度目(ダルビッシュが09、11年の2度)。高卒3年目以内では00年五十嵐(ヤクルト)以来となり、大谷の21歳0カ月は8番目の年少記録。今季の大谷は投手で13試合、DHと代打で27試合に出場。1リーグ時代の41年に投打の両方で規定をクリアした野口二郎(大洋)が5月18日に10勝一番乗りしているが、2リーグ制後に二刀流選手の両リーグ10勝一番乗りは初めてだ。

 ▼日本ハムの安打は近藤の二塁打だけ。1安打で勝利は14年5月10日DeNA以来でプロ野球36度目(他に0安打勝利が1度)。日本ハムでは95年4月18日オリックス戦以来5度目になる。また、1点はスクイズで、日本ハムの犠打による1-0勝利は62年10月6日阪急戦以来、53年ぶり。「1安打+スクイズ」で1-0勝利は球団史上初。