「世界の謙さん」もガックリだ。大の阪神ファンで知られる俳優渡辺謙(55)が、今季初めて応援に駆けつけた。試合前には和田豊監督(52)らを激励し、バックネット裏の観客席前列にスタンバイ。そんな熱意もむなしく、目に飛び込んできたのは屈辱の0封負けだった。試合終了を見届けると「コメントしにくい試合です…」とうつむき、速足で甲子園を後にした。

 日本時間8日(現地7日)にトニー賞授賞式(米ニューヨーク)で見せた表情豊かな姿が、わずか12日で一変だ。ミュージカル「王様と私」で日本人初の主演男優賞候補になった渡辺の応援を、猛虎は裏切る形になった。

 昨年もシーズンはもちろん、CSや日本シリーズを現地観戦。今年2月には和田監督から「期待していただけるチームにしておくので、ブロードウェーで暴れてきてください」とメールで激励を受けた。米国滞在中も多忙の合間を縫って経過をチェック。それだけに試合前は、混戦のセ・リーグを抜け出すキーワードを独自目線で語っていた。

 「お祭り気分でやれれば、走っていけると思う。去年の上本くんみたいな、若手で引っ張っていけるような選手が出てくればね。落ち着かずに『どんどんいくぞ』という雰囲気をつくると(頂点まで)いけちゃうんじゃないかな」

 望んだのは若き先導役の出現だった。この日はスタメン最年少の27歳コンビ、大和と今成が計7打数1安打。願いとはほど遠い現実になったが、渡辺は腹をくくっている。「10月末から11月のスケジュールは空けています」。30年ぶりの日本一へ、謙さんだって本気だ。今日21日も観戦予定のスターを、もう悲しませられない。【松本航】