明けない夜はない! 阪神江越大賀外野手(22)がDeNA戦で名誉挽回のプロ初猛打賞をマークした。前日25日に失点につながる痛恨失策。一夜明け、失敗は成功の母とばかりに、5回に貴重な適時打を放ち、8回には3安打目となる二塁打と満員の甲子園を沸かせた。チームは2位に浮上。日々成長するルーキーの汗がまぶしい。

 江越は黄色一色のスタンドへ「最高です!」と声を張り上げた。昇格後5試合で3度目になったお立ち台は、ひと味違った喜びになった。2点リードの5回2死一、二塁。三遊間を破る適時打に満員の観客が立ち上がった。

 「引きずらない…ということはなかったですね。反省して、またやろうと思いました」。試合後には本音が出た。2戦連発の勢いで臨んだ前日25日。勢いは急停止した。4打数3三振、失点につながる痛恨の失策…。和田監督に「こんなので落ち込むようなことじゃダメ」と言われた。それでも普段と同じような夜を過ごせるはずがなかった。

 一夜明けると、行動でモヤモヤと決別した。試合前練習でまず向かったのは、中堅ではなく遊撃。何度もゴロを捕球し、送球するまでの動きを山脇外野守備走塁コーチと確認。走塁は和田監督から指導を受け、高橋打撃コーチとは「低めのボール球をしっかり見極めるように」と反省点を明確にした。8回にはエレラの146キロ直球を右中間へ。プロ初の猛打賞となる二塁打。右方向への強いライナーは、江越の原点だった。

 駒大2年の夏。3年生以下の大学日本代表候補に選ばれると、当時富士大3年だった西武山川が放つ打球に「見たことがない」と目を丸めた。「どうしたらそうなるんですか?」。山川は右腕の使い方やボールを押し込む方法を惜しみなく教えてくれた。大学で遂げた成長が、プロの世界でも出た。和田監督も「これだけ変化球が多い中で、ストライクゾーンの真っすぐを一振りで仕留めた。これからプロ野球選手としてやっていく中で、すごくいい打者になる条件」と大絶賛の打撃だった。

 中堅守備では6回1死一塁で、右中間の当たりをフェンス間際でキャッチ。直後に福留がささやいてきた。「甲子園は浜風で(右中間の打球が)戻ってくる。迷わず追いかけていけ」。前夜の励ましが、技術的なものへと変わっていた。首位ヤクルトを1差でピタリとマーク。その立役者は正中堅手への壁を、また1枚乗り越えた。【松本航】