最後は気迫勝ち! 2点差に迫られなお6回2死満塁。勝負の行方を左右するポイントで救援した阪神安藤優也投手(37)がみせた。代打和田と手に汗握る12球の攻防。最後は136キロ直球で見逃し三振だ。イニングをまたいだ7回も無失点。勝利へのヤマを越える快投で、虎党を安堵(あんど)させた。

 37歳と43歳の全12球の戦いに、どよめきと歓声が入り交じった。6回、2点差とされ、なお2死満塁。「代打、和田」とコールされると、阪神ベンチが動いた。先発岩田からスイッチし、右腕安藤がマウンドに立った。

 「打者が和田さんだったので、気持ちだけでは負けないように行った。いい打者のイメージしかなかった。技術よりも気持ちでいきました。岩田にも勝ち星がついて良かった」

 フルカウントからは全球ストライクゾーンに投げきった。内角フォークでファウル、外角直球でファウル、そして外角直球でファウル。「どこかでインサイドを使わないといけなかった。うまくツル(鶴岡)がリードしてくれた」。12球目の内角136キロ直球に、和田のバットが動かない。見逃し三振-。マウンド上で安藤はこん身のガッツポーズ。その姿にナゴヤドームを黄色に染めた虎党が沸いた。

 目の前に越えないといけない山があるからこそ頑張れる。1学年上の38歳右腕福原とともに、阪神中継ぎ陣を引っ張ってきた。「フクさん(福原)があれだけやっているんだから、負けられないんだよ」。走り続ける先輩は目標であり、ライバルだ。安藤のエネルギーとなり、走り続けることができている。

 仕事人でもある。2月の春季キャンプでは調整を委ねられ、高知・安芸にいた。まだ肌寒い中、黙々と状態を上げていた。「先発ローテーション5番手? 6番手? 実は、先発調整してるから」とニヤリ。実戦で先発する若手投手がいなかったために、回ってきたマウンドだった。古屋2軍監督も「安藤だから、前をやってくれと頼める」と全幅の信頼を置いていた。任されたところで仕事を全うする。

 今季初のお立ち台にも立った。「いや、ぼくでいいのかなと。すみません、みなさん」と謙遜したが、この日のヒーローはまさしく安藤だ。和田監督は「安藤が大きかったわ。やっぱり。2アウト満塁で。粘られながらも、打ち取ることができて。あそこで流れを止めることができた」と称賛した。一時は調子を落としていたが、勝負の夏場に37歳が力強く戻ってきた。【宮崎えり子】