4番が決めた。日本ハム中田翔内野手(26)が、9日の楽天21回戦で8回に決勝打を放った。1死二塁の好機で、楽天クルーズの153キロ直球に詰まらされながら打球は左前へポトリと落ちた。思わず両手でガッツポーズした主砲が接戦にケリをつけ、チームは今季6度目の同一カード3連勝。福岡で喫した3連敗を取り返し、大逆転Vへ本拠地で仕切り直した。

 初球だった。詰まらされた。バットは、へし折られた。8回1死二塁。中田のどん詰まりの打球が左前に落ちた。決勝の適時打。「ヨッシャー!」。心からの叫びだった。試合を決める打点に思わず両手でガッツポーズも飛び出した。「ファウルかと思ったけど、いい感じで(フェアゾーンに)戻って、いいところに落ちてくれた」。6試合28打席ぶりの適時打、12試合ぶりの複数安打もマーク。悩める主砲が、求め続ける価値ある4番の仕事を果たした。

 自分のことは、どうでもよかった。「何とか周りで盛り上げたいからね」。この日は近藤の22歳の誕生日。試合前から4月22日のことを思い出していた。敵地での西武戦。自身の26度目のバースデーは、自らの祝砲もあり勝利。「コンちゃん(近藤)もホームランを打ってるし、お立ち台に立たせてあげたかった。それの方が、うれしかったね」。後輩を祝う一打に笑みがこぼれた。

 絶不調を自認する。後半戦は打率1割8分3厘、1本塁打3打点と苦しむ。「どうしたら、いいんだろう」。精神的に追い詰められながら、必死に打開策を練った。「いい時のビデオを見て、ロングティーをしてチェックしたり…」。決勝打は放ったが、会心の打球はなし。悩みは尽きないが、トンネルの出口は少しだけ見えた。「ここ最近、振り切ることも出来なかった。(8回は)久々に、内角のボール球だったけど振り切れた。これが、いいきっかけになれば」と、前を向いた。

 中田が苦悩する姿に栗山監督は、あえて放任を貫いてきた。「今は自分で処理をしないといけない時間。自分の向かう場所を見つけろ、と野球の神様に言われている」と、自分の力で不調から抜け出すことに期待する。主砲として背負う重圧も承知しながら、何とか結果を残した主砲に「ちょっと、うれしいです」と、指揮官の顔もほころんだ。

 今季8度目の3連勝で、首位ソフトバンクとは9・5差。福岡で喫した屈辱からチームは態勢を整え直した。中田は強気に言った。「巻き返せないゲーム差ではないと僕は信じている」。残り43試合。4番が仕事を果たせる時間は、まだまだある。【木下大輔】