天敵もビックリ? の三塁打で、虎が4連勝や。今季最多貯金6や。苦手中日バルデスにこの日も苦戦したが、同点の8回。2死二塁で坂克彦内野手(29)が決勝の適時三塁打。坂はチーム103試合目で今季初打点。新たなヒーローの誕生はチーム一丸勝利の証し。2位と1・5差は変わらずも、恒例の長期ロードで3カード連続勝ち越しを決め、勝負の夏場に乗ってきたで~。

 人生には上り坂、下り坂、そしてまさかの坂がある-。格言どおり、坂がまさかの大仕事だ。1-1の8回、2死から鳥谷が二塁打で出た。次打者は試合途中から出場の坂だ。普段は守備固め要員で試合前までの今季成績は20打数3安打、打率1割5分。京セラドーム大阪の虎党も9回の攻防を覚悟したかもしれない。

 だが、打った。好投を続ける中日バルデスがフルカウントから投げた8球目外寄りの真っすぐを左中間方向にはじき返した。打球はショートの横を抜け、前進守備の外野を抜けた。坂は一気に三塁へ。今季103試合目にして初打点が決勝適時三塁打だ。

 「100試合過ぎて、ちょっとさみしいですけど。でも、よかった。投手も頑張っていたし、勝ててよかった。ファウルで粘っているうちにタイミングがとれたと思います」

 今季初のお立ち台。観衆を前にしたインタビューも2年前、沖縄・那覇での中日戦で西岡に無理に壇上に上げられて以来のことだ。「試合より緊張します」と言うのも無理はない。

 終盤の勝負どころだったが中谷、狩野と右の代打はすでに起用済み。「内野手も荒木しか残っていなかったしね…」と覚悟を決めての快打だった。

 高校野球の夏。坂にも栄光の思い出がある。常総学院3年時、夏の甲子園でダルビッシュ有擁する東北高に勝ち、頂点に立った。「だからと言っても…。今は当時のチームメートとグループLINE(ライン)でやりとりするぐらい」と笑う。来月6日には30歳だ。そんな坂には、夢がある。

 「ボクはね。最後の『いてまえ戦士』になりたいんですよ。今はなくなった近鉄にドラフト指名されてもらったことを誇りに思っている。近鉄出身で最後まで現役を続けた選手になりたいんです」

 同僚の藤井をはじめ、マリナーズ岩隈、オリックス坂口と少数ながら近鉄出身者がいる中、最後までユニホームを着ていたい。坂が心に決めていることだ。近鉄が本拠地にした京セラドーム大阪も、そんな坂を応援したはずだ。

 「あとからいった選手が仕事をすると盛り上がる。坂がよく打ってくれた。気持ちで打ったようなヒットだ」。和田監督もそう目を細めた。チーム4連勝で今季最多貯金も6に更新。10年ぶりリーグ制覇へ。終わってみればラッキーボーイの1人に、坂が名前を連ねるかもしれない。【編集委員・高原寿夫】

 ▼阪神は12日、京セラドーム大阪での中日戦に勝利。14年4月2日の対戦で15-0と大勝してから、同球場での中日戦10連勝となった。

 ▼阪神が、夏の甲子園期間で恒例の長期ロード開始から3カード連続勝ち越しを決めた。13年の3カード連続(巨人戦○●○、広島戦●○○、中日戦●○○)以来で、12年の和田監督就任後では2年ぶり2度目。期間中8試合のチーム打率は2割8分4厘で、ロード前の2割4分から大幅に向上した。