プロ入り初のグランドスラムは逆方向にねじ込んだ。巨人堂上剛裕外野手(30)がDeNA戦の4回1死満塁で代打で登場し、左翼席に今季3号の満塁本塁打を放った。この日からスタートさせた「リラックス&フルスイング打法」が結果として表れ、先発内海哲也投手(33)の今季初勝利をアシストした。

 無駄な力は捨てた。堂上は、全身にみなぎる力をインパクトに集約した。1点リードの4回1死満塁、代打で登場。DeNA先発三浦の初球だった。ボール気味の外角フォークに目いっぱい両腕を伸ばした。打球は低空飛行のまま左翼席に消えた。原監督と内海は珍しくバンザイで喜んだ。ゆっくり生還しナインに手荒い祝福を受けた。こわばった表情が一転、いつものぼくとつとした笑顔に変わった。「三浦さんはビシバシと球が来ていたので、早めから準備していた。逆方向だけを意識していた。感触は良かった」。プロ通算13本目にして初のグランドスラム。逆方向へのアーチも初めての体験だった。

 千金打の裏には堂上自身の信条と、心憎いアシストがあった。力任せに引っ張り込む“剛力”に、高橋由が柔らかさを加えてくれた。7月中旬の全体練習。“ミスター逆方向”の兼任コーチから「お前は力あるんだから、8割で振ればいいよ。それでもスタンドには入るから」と言葉をもらった。肩の力みがすっと抜けたが、生粋のハードヒッターは、脱力の極意をすぐには会得できなかった。

 7月22日の阪神戦で本塁打を放って以降、11試合連続で無安打。スイングとは裏腹に神経質な性格の男は「そろそろ1本出ないと(2軍に)落ちるかな」と弱音も出た。早出練習のもっと前から、藤井打撃投手の手を借りて愚直に振り込んだ。高橋由から金言を授かって約1カ月のこの試合前、ようやく「初球から思い切り行くよ」と吹っ切れた。強さと美しさを両立させた「リラックス&フルスイング」で、今までになかった新しい放物線を描いた。

 早いイニングで勝負をかけた原監督も「早めに仕掛けようと思っていた。最善の策です。まだまだ守りに入る選手じゃない」と称賛した。エース内海の今季初勝利をアシストし「力になれて良かった」とまた、素朴な笑みがこぼれた。力任せの打撃とは決別した“新・堂上剛裕”。三つどもえからの脱出を仕掛けるチームにも、大きな力を与えた。【細江純平】

 ▼堂上が代打満塁本塁打。堂上の代打本塁打は7月22日阪神戦以来通算4本目だが、満塁では初めて。代打以外を含めても満塁弾は初。代打満塁本塁打は5月2日小窪(広島)以来だが、巨人では11年10月22日横浜戦で代打満塁逆転サヨナラ弾を放った長野以来。堂上の代打起用は4回と早めの仕掛け。巨人で4回以前に代打満塁弾は、87年4月19日広島戦の2回に2番岡崎の代打で打った原以来28年ぶり。