壮絶な幕切れで、悪夢の東京ドーム3連敗だ。阪神藤浪晋太郎投手(21)が8回まで1失点と力投。巨人菅野と投手戦を演じ9回裏も続投したが死球にバント処理を失策するなどして無死満塁で降板。2番手呉昇桓がサヨナラ打を浴びた。1安打負け、1イニング12失点に続く悲劇。巨人戦のシーズン負け越しが決まり、0・5ゲーム差に迫られた。

 拍手が切ない。1-1の9回裏無死満塁で降板。藤浪は呉昇桓とのすれ違い際、祈りを込めるように手と手を合わせた。黄色く染まった東京ドームの左半分から、どこからともなく拍手のウエーブが巻き起こった。悪夢の結末を目前にしながら、虎党は優しく21歳を包み込もうとした。それでも藤浪は自らを責めるかのように厳しい表情のままベンチに姿を消した。

 藤浪 マウンドに上がった以上、(9回は)最後まで投げたかった。中盤以降は粘れた。でも、負けてしまっては意味がないです。

 3連戦の第3ラウンド。1安打負け、1イニング12失点の連敗を受け、宿敵相手の3連敗だけは阻止したかった。2回2死一塁から8番小林の左中間適時二塁打で先制された後はカットボールを利かせて、要所を締めた。同点の8回1死満塁で代打高橋由、7番村田から2者連続空振り三振を奪うと、高ぶった感情を雄たけびで表現した。8回裏終了時点で137球。5四死球ながら12奪三振6安打で1失点。首脳陣は「続投」に懸けた。

 和田監督 余力が十分あったんで。

 中西投手コーチ 最後まで晋太郎と心中、ということやな。

 粋に感じたであろう。ただ、巨人菅野との息詰まる投げ合いによる疲労が土壇場で手元と足元を狂わせた。9回裏。先頭8番小林への初球、真っすぐが抜けて死球となる。無死一塁で代打橋本が転がした一塁寄りのバントをファンブルし、思わずドームの天井に目を向けた。1番立岡にはカットボールを右前に運ばれ、無死満塁。「あそこまでがいっぱいだという判断」。指揮官は守護神へのスイッチを決断。最後はサヨナラ負けという事実だけが残った。

 藤浪 9回も行ける状態にあった。コンディションどうこうの問題ではない。デッドボールもエラーもすべて自分のミスです。

 8回0/3、141球を投げて2失点。東京ドームでの連敗は6に伸び、5戦ぶりの黒星となる6敗目を喫した。前日19日に1イニング12得点も記録した好調打線を相手に、誰も責めることができない内容。ただ、投げた本人だけは自分自身を切り捨てた。大黒柱の責務を全力で背負うからこそ、納得しなかった。

 藤浪 しっかり勝ちたいという気持ちを持って投げた。シーズンはまだ続く。まだ8月半ば。次はしっかりやりたい。

 よほどの疲労が残らない限り、予定通り中5日で26日広島戦に向かう。今までもこれからも、つまずきは進化への材料に変えるだけだ。【佐井陽介】

 ▼藤浪が12奪三振で今季8度目の2桁奪三振。阪神の投手で同一シーズン8度以上は、江夏豊(68年20度、69年8度、70年12度、71年11度)、村山実(59年9度)、井川慶(04年8度)に次ぎ4人目。

 ▼同一カード3連敗は、6月30日~7月2日ヤクルト戦(神宮)以来、今季5度目。巨人戦では、14年9月9~11日(甲子園)以来。東京ドームに限ると、13年8月27~29日以来。これで東京ドームでの8月のチーム通算成績は、88年の開場以来26勝70敗6分け、勝率2割7分1厘となった