連敗脱出や。首位死守や。前日まで東京ドームで巨人に3連敗を喫した虎が、戻ってきた大阪でショックを振り払った。京セラドーム大阪でのDeNA戦で新風を吹き込んだのは、7月1日以来の先発出場となった梅野隆太郎捕手(24)。バットでは2回に先制のV二塁打。守っては8回まで1失点のリード。巨人との0・5ゲーム差は変わらなかったが、リーグVへ再発進だ。

 力強く右拳を振り下ろした。リードは2点。味方の2失策で招いた5回2死一、三塁のピンチで、梅野は腹をくくった。「1発のあるバッターだし、いくところはいかないと」。4番筒香に2球連続で内角直球を続け、3球目は再び内角低めにフォークだ。先発岩田とこの日のテーマに掲げた「左打者への内角攻め」を勝負どころで貫き、力のない二ゴロに仕留めた。「あそこを打ち取れたのが大きかった」。こん身のリードに自然と感情が荒ぶった。

 「開幕より、変なプレッシャーというか、緊張していた。なんとかしたいという一心でリードしました」

 2試合勝利から遠ざかっていた岩田の流れを変えるべく、7月1日ヤクルト戦以来の先発マスクを託された。チームは巨人戦3連戦で3連敗を喫し、この日負ければ首位陥落の可能性があるところまで追い込まれていた。その厳しい一戦で、第1打席から持ち味の打力を発揮。2回1死一、二塁。追い込まれながらも右中間へ運んだ。「三振を恐れず、気持ちで打ちました!」。守っては岩田、福原を8回まで1失点でリードした。和田監督も「やっと何とか抑えたろうという必死な姿が見えた。勉強して、投手に信頼される捕手になってほしい」と期待通りの姿を喜んだ。

 開幕を正捕手でスタートも、先発マスクが徐々に減った。コンビを組む投手が打ち込まれ、多くの批判も耳に入った。「去年とは全く違う。厳しく言われることばかり。いいと思ったプレーでも、批判されるんですから…」。覚悟はしていたが想像以上だった。

 苦しむ5月の遠征中。いつも通りに起床し、午前11時ごろに昼食を取ろうと宿舎内の会場へ向かった。その道すがら、ミーティング部屋の前で足が止まった。「山田さん(バッテリーコーチ)が1人で、ビデオを見ていた。しかもユニホームを着て、もう出発できる態勢で…」。バッテリーが配球面を話し合うミーティングは午後からの予定。自らの試合準備に対する姿勢と比べ、気持ちをあらためた。自分のやるべきことは、勝つ手法を追究することだった。2度の2軍落ちを経験し、思い描いた2年目とはかけ離れた。「引き出しを増やしたくて。捕手出身の方の評論を読んで吸収しました」。鳴尾浜の寮では、自分が1面を飾っても関心が無かったスポーツ新聞を読み込んだ。

 「苦しい時期はあったけれど、今の声援を聞いて、岩田さんに勝ちがついて、この日を迎えられたことがうれしいです」

 お立ち台で聞いた大歓声が心に染みた。連敗は3でストップ。笑顔の梅野が帰ってきた。【松本航】