ローテ再編も黒田復帰にブレはない。1日の阪神戦(甲子園)は雨でノーゲームとなった。首位との決戦を前に、右手に打球を受けて一時チームを離れていた広島黒田博樹投手(40)が合流した。捕手を立たせ、投球練習を再開。今季8度目の中止で先発ローテーションの再編を余儀なくされたが、ベテラン右腕は週末ヤクルト戦の先発が決まった。

 黒田の携帯電話が鳴った。メールだ。「右手を引っ込める癖をつけとこうか?」。ヤンキース時代のチームメートで今も米大リーグで戦うイチローからだった。海の向こうの先輩から届いたメールに思わず苦笑い。「本当にそうですね」。反省の思いを込め、送信ボタンを押した。

 「ボールが見えていたら、そんなに危ないところに当てない自信がある。急所には当てない。何度も当てて来ましたからね」

 強がった場面は、29日のDeNA戦。4回に投手右横への打球に、本能で右手を出した。18日の中日戦にも同じプレーがあった。この時もとっさに急所を避けたつもりだった。だが、試合中に急行した横浜市内の病院では、「問題なし」という結果は得られず。軽症ではない可能性もあった。「とうとう来たなと思ったけど、そうは簡単にやめさせてくれないね」。30日に広島に戻り、31日に再検査を受けた結果異常は見られず、黒田の表情は安堵(あんど)に包まれた。

 今季は遠征に同行せず、広島で自分のペースで調整を続けてきた。だが今回は再検査の翌日に神戸入り。登板のない甲子園にも同行している。シーズン終盤。黒田もナインとともに一丸となっている。2日間のノースローから、捕手を立たせて30球を投げた。「(右手は)大丈夫。投手は間隔を詰めて1試合でも多く投げたいもの。それがチームのプラスになるなら」。痛みがなくなったわけではない。ただ、そんなことは言っていられない。

 阪神戦が今季8度目の中止となり、ローテーションが再編される。黒田は4日のヤクルト戦から5日に回ることが濃厚だ。残り28試合となり、黒田を含めた4本柱には中5日、中4日でのフル回転が求められる。投球再開の報告を受けた緒方監督は「ひと安心。黒田には予定通り行ってもらう」とベテラン右腕に期待する。帰ってきた黒田とともに、チームは最後のムチを打つ。【前原淳】