広島は新井貴浩内野手(38)の好走塁が岩田を攻略する突破口を開いた。00年9月13日中日戦以来、15年ぶり2度目の本盗で打線に火をつけた。「詳しいことは言えないけど、2アウトで2ストライクだったし、石井さん(三塁コーチ)からも何かあったら思い切って行こうと言われていた。勇気を持って行けた」。

 1点を追う4回2死一、三塁。打席の田中はカウント2-2。岩田が一塁へ送ったけん制球に、飛び出した鈴木誠は慌てて帰塁。けん制がそれて一塁走者はセーフ。その間、スルスルとリードを広げていた三塁走者の新井は思い切ってスタートを切った。「ライト側にそれるのが見えた。ファーストは走者もいるし、(本塁に)投げにくい」。慌てた一塁手ゴメスは体勢を崩しながらからもたたきつけるように本塁へワンバウンド送球。滑り込んだ新井の左手が先に本塁をタッチした。岩田から1点をもぎ取り、同点に追いついた。

 前回対戦で7回4安打1得点と抑えられた岩田に、この日も3回まで1安打無得点。緒方監督は「新井が思い切ってスタートしてくれた。あそこで流れが変わった」と称賛した。サインは重盗だったとみられるが、走塁への徹底した意識付けが実を結んだ。新井の激走が5回に菊池の勝ち越し打、エルドレッドの3ランを呼び込んだ。これで首位阪神に3・5ゲーム差。今日3日も首位をたたけば一気に上位との差が詰まる。新井は「勇気を持って前へ前へ。まだ走れますね。また明日がある。前へ前へという気持ち」。ベテランが上位浮上への推進力となっている。【前原淳】