阪神が、執念のサヨナラ勝ちで単独首位を死守した。延長戦にもつれ込んだ巨人との一戦。11回1死二塁からマット・マートン外野手(33)が左中間を抜く二塁打で勝負を決めた。ピンチでは和田豊監督(53)もハッパをかけにマウンドに向かうなど、チーム一丸となって巨人を倒した。総力戦で2位ヤクルトと1ゲーム差、3位巨人とは3ゲーム差まで開いた。最短で13日に優勝マジック12が点灯する。

 マートンの打球が左中間を抜けていった。白球が芝生に転々とするのを確認する前に、和田監督はベンチを飛び出していた。延長11回の死闘はサヨナラ勝ちという劇的な決着をみた。

 和田監督 最後の最後にマートンが決めてくれた。本当にここしかないというところで決めてくれた。全員野球というか。打線もよく追いついたし、投手も苦しいところでよく踏ん張ってくれた。

 王者巨人との直接対決。今季最初にして最大の正念場だった。選手はもちろん、指揮官も執念の塊となった。延長10回2死二塁で呉昇桓が村田を迎えた場面、和田監督がベンチを出た。「勝負だ!」。一塁が空いているが、選手の迷いを消し去った。2イニング目を力投する守護神と顔を突き合わせゲキを飛ばした。

 和田監督 あそこは迷わせてはいけない。次も計算しながらの場面だが、勝負ということ。

 攻撃でも熱くなった。1-1同点で迎えた6回、ベンチ前の円陣に監督も加わった。采配にもメッセージが込められていた。1つでも先の塁へ-。8回、新井良が二塁打で出ると、キャプテン鳥谷に犠打を指示した。結果的に失敗したが、試合を通して狙いは明確だった。3回には先頭伊藤隼がヒットで出ると8番鶴岡に犠打。2死になってでも得点圏へ進める作戦だった。結果的に藤浪の左前打で好機が拡大し、先制につながった。苦手マイコラスを地道に攻めた。

 2点を勝ち越された7回も不振で悩んでいたゴメスの適時二塁打で1点差、伊藤隼の犠飛で同点とした。

 和田監督 ベンチだけでなく、全選手、全スタッフがこの一戦にかける気持ちが強かった。何としても取りたいゲームだった。ビハインドからでも何とかという気持ちが最後まで出ていた。その中でひっくり返せた。これを自信にしてあと19試合、戦っていきたい。

 天敵マイコラスを引きずり下ろしての勝利。主役のマートンが言った。「きょうは本当にチームの勝利。(来日)ロクネンメ、ユウショウナシ、ディス、イヤー、ガンバリマショウ!」。この巨人戦前、異例の全員練習で和田監督は心のスイッチを入れろと号令をかけた。それを体現したような勝利だった。【鈴木忠平】

 ▼マートンが延長11回にサヨナラ二塁打。阪神の外国人選手が巨人戦でサヨナラ安打は93年4月24日にパチョレックが木田から打って以来、22年ぶりになる。マートンのサヨナラ安打は今年の3月27日中日戦以来で通算6本目。阪神で通算6本のサヨナラ安打は真弓や鳥谷らに並び9位タイとなったが、外国人選手で6本打っているのはマートンだけ。阪神は早ければ13日にマジックが点灯。阪神が10~13日に4連勝、ヤクルトが10、12、13日に3連敗で、阪神にM12が出る。